シェイクスピアの終わりよければすべてよしの秘密

ヘレンは、亡くなった名医の娘であり、孤児として伯爵夫人に育てられています。彼女は身分の低い自分に恋心を寄せるベルトラム伯爵に、その想いを告げることも許されません。伯爵がフランス王宮に召され、王の重い病を治癒した褒美として結婚相手を自由に選ぶ権利を得ると、ヘレンは王に直訴し、伯爵と結婚します。

しかし、伯爵はヘレンを妻と認めず、戦場へ赴いてしまいます。ヘレンは伯爵夫人からの手紙を受け取り、伯爵がフィレンツェにいることを知ります。ヘレンは伯爵夫人と共謀し、伯爵を騙して自分との結婚を承諾させようとします。

ヘレンは、伯爵が言い寄るダイアナと入れ替わり、伯爵と一夜を共にします。その際に伯爵の指輪を手に入れ、自分自身の指輪を渡します。伯爵はヘレンと知らずに関係を持ち、ヘレンとの結婚の条件として提示していた二つの条件「伯爵の指輪を手に入れること」と「伯爵の子を身籠ること」を達成します。

このヘレンの策略は、劇中で明確に描かれているものの、倫理的に許される行動なのか、様々な解釈が可能です。

「終わりよければすべてよし」には、善悪二元論では割り切れない複雑な心理を持った登場人物が多く登場します。

例えば、ベルトラム伯爵は高慢で身分の低いヘレンを拒絶しますが、一方で勇敢で魅力的な一面も持ち合わせています。また、ヘレンは一途で献身的な女性として描かれる一方で、目的のためには手段を選ばない大胆さも持ち合わせています。

これらの複雑な心理描写が、この作品をより深みのあるものにしています。

「終わりよければすべてよし」という言葉は、劇中で複数回登場します。この言葉は、劇中の出来事を正当化する言葉として解釈することもできますが、一方で皮肉として解釈することもできます。

果たして、ヘレンの策略によって実現した結末は、本当に「すべてよし」と言えるのでしょうか？この問いに対する答えは、観客一人ひとりに委ねられています。