## シェイクスピアのリチャード三世と人間
リチャード三世の人間像
シェイクスピアの史劇「リチャード三世」は、狡猾で残忍なリチャード三世が、イングランド王座を手に入れるためにあらゆる手段を尽くす物語です。彼は生まれつき身体的な欠損を抱えており、「この太陽に照らされた世界に生まれながらの不具者として」と自らを表現しています。このコンプレックスが、彼の歪んだ野心と冷酷さを助長していることを劇中で繰り返し語られます。
リチャードは優れた知性と弁舌の才を持つ策略家として描かれています。彼は巧みな言葉と偽善的な行動で人々を操り、自分の目的を達成するために利用します。劇中では、アン夫人やクラレンスなど、多くの人物を言葉巧みに騙し、破滅へと導いていきます。
しかし、リチャードは単なる悪役として描かれているわけではありません。彼は皮肉とユーモアを交えながら、自身の悪事を観客に告白する場面も多々見られます。 このことで、観客は彼の内面に潜む不安や孤独、そして自己嫌悪を垣間見ることができます。
人間の本質への問いかけ
「リチャード三世」は、権力欲、野心、嫉妬、裏切りといった人間の負の側面を克明に描き出すことで、人間の本質に鋭く問いかけています。リチャードの悪行の数々は、人間の心の奥底に潜む闇を象徴していると言えるでしょう。
また、劇中では、リチャードに騙される者、利用される者、そして彼に立ち向かう者など、様々な人間模様が描かれています。彼らの行動や選択を通して、善悪の境界線や正義の在り方についても考えさせられます。