シェイクスピアのリア王の関連著作
リア王の史的根源
シェイクスピアの『リア王』は、ブリテン王国の伝説上の王リーアに関する物語を基にしています。この伝説は、様々な歴史書や文学作品で語られてきました。
* **『ブリタニア列王史』** (Historia Regum Britanniae) – 12世紀にジェフリー・オブ・モンマスによって書かれた歴史書。リーア王の物語を含む、ブリテンの建国神話から7世紀までの歴史を記しています。ジェフリーの記述では、リアはブリテン王であり、3人の娘に王国を分割することを決めます。しかし、末娘コーデリアだけが彼を本当に愛していたにもかかわらず、彼女の愛情表現が不十分だったためにリアは彼女を勘当してしまいます。その後、リアは2人の姉に裏切られ、コーデリアに助けを求めることになるという物語です。
* **『鏡』** (The Mirror for Magistrates) – 16世紀に出版された詩集。ジョン・ヒギンズが編集し、トマス・サッケヴィル、トマス・ノートン、ジョージ・ファーガスなどが執筆に参加しました。この作品には、リーア王の物語を題材にした”The Complaint of Cordelia”という詩が収録されています。
* **『ホルンシェッド年代記』** (Holinshed’s Chronicles) – 16世紀に出版されたイングランド、スコットランド、アイルランドの歴史書。シェイクスピアは自身の歴史劇の多くで、この年代記を資料として使用しており、『リア王』も例外ではありません。ホルンシェッドはリーア王の物語を、ジェフリー・オブ・モンマスとほぼ同じように記述しています。
これらの史的資料に加えて、シェイクスピアは『リア王』の執筆において、他の文学作品からも影響を受けていると考えられます。例えば、フィリップ・シドニーの『アーケイディア』やエドマンド・スペンサーの『妖精の女王』などが挙げられます。
シェイクスピアは、これらの先行作品を参考にしながらも、独自の解釈を加え、登場人物やプロットを改変することで、『リア王』を単なる伝説の焼き直しではなく、人間の愚かさや愛と憎しみの複雑さを描いた普遍的な悲劇へと昇華させました。