シェイクスピアのマクベスの発想
シェイクスピアの源泉
ウィリアム・シェイクスピアは自身の戯曲の筋書きを独自に考案することは滅多になく、既存の物語や歴史的記録から着想を得ていました。『マクベス』も例外ではなく、シェイクスピアは主に二つの源泉から着想を得ていたことが分かっています。
ホリンシェッドの年代記
シェイクスピアの『マクベス』の主要な源泉は、ラファエル・ホリンシェッドによる『年代記』（1577年）です。この広範な歴史書には、イングランド、スコットランド、アイルランドの歴史が含まれており、シェイクスピアはこの書物から多くの戯曲の題材を得ていました。『マクベス』の場合、シェイクスピアはホリンシェッドの年代記に記された、マクベスによるダンカン王殺害と、その後のマクベスの治世と死に関する記述を参考にしました。
スコットランド王ジェームズ1世
『マクベス』は、1603年にイングランド王位に就いたスコットランド王ジェームズ1世に敬意を表して書かれたと考えられています。ジェームズ1世はバンコーの子孫とされており、シェイクスピアは戯曲の中でバンコーを肯定的に描くことで、新たな君主を称賛しようとしたのかもしれません。また、ジェームズ1世は魔術に強い関心を抱いていたことが知られており、『マクベス』に登場する三人の魔女や超自然現象は、ジェームズ1世の興味を引くために意図的に盛り込まれた可能性があります。
史実と創作
シェイクスピアはホリンシェッドの年代記や他の歴史的記録から着想を得ていましたが、戯曲の筋書きのために自由に脚色を加えています。例えば、歴史上のマクベスはダンカン王を戦場で殺害した野心的な統治者でしたが、シェイクスピアの戯曲では、マクベスは野心と罪の意識に苦しむより複雑な人物として描かれています。また、シェイクスピアは劇的な効果を高めるために、三人の魔女の役割を誇張したり、バンクォーの幽霊が登場する場面など、独自の要素を加えています。