## シェイクスピアのペリクリーズが扱う社会問題
権力と腐敗
ペリクリーズでは、アンティオカス王と娘のインセストの物語を通して、権力と腐敗の問題が鮮明に描かれています。アンティオカスは絶対的な権力を持ち、その地位を利用して娘を支配し、近親相姦というタブーを犯します。これは、権力がいかに腐敗しやすく、倫理や道徳を歪めてしまうかを象徴しています。さらに、アンティオカスは自身の罪を隠蔽するために、ペリクリーズを含む多くの人々を欺き、陥れようとします。このことから、権力者が自身の利益のために真実を隠蔽したり、他者を犠牲にすることが往々にしてあるという現実が浮き彫りになります。
運命と自由意志
ペリクリーズの物語は、運命の嵐に翻弄されながらも、自分自身の選択と行動によって運命を切り開こうとする人間の姿を描いています。ペリクリーズは、アンティオカス王の秘密を知ったことで命を狙われ、故郷を追われることになります。その後も、海賊や嵐、人身売買など、様々な困難に遭遇します。これらの出来事は、人間の運命が無慈悲な力によって左右されることを示唆しています。
しかし、ペリクリーズは絶望的な状況下でも希望を捨てず、行動し続けます。彼は娘のマリナと再会を果たすために旅を続け、最終的には失われた家族との再会を果たします。これは、困難に立ち向かい、自らの意志で未来を切り開こうとする人間の強さを表現しています。
女性への抑圧と抵抗
ペリクリーズには、アンティオカス王の娘や、ペリクリーズの妻と娘など、様々な女性が登場します。彼女たちは、男性中心の社会の中で、様々な困難や抑圧に直面しています。アンティオカス王の娘は、父親の歪んだ愛情の犠牲となり、自由を奪われています。ペリクリーズの妻は、夫の不在中に娘を出産し、死んだと誤解されながらも、娘を守りながら生き延びます。
ペリクリーズの娘であるマリナは、人身売買に遭いながらも、知性と勇気を武器に運命に抗い続けます。これらの女性たちは、受動的な犠牲者ではなく、困難な状況下でも自らの尊厳と自由を守ろうとする力強い存在として描かれています。