## シェイクスピアのペリクリーズから学ぶ時代性
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ロマンスというジャンルとエリザベス朝演劇
ペリクリーズは、シェイクスピアの晩年の作品に分類される「ロマンス」劇です。このジャンルは、悲劇的な要素を含みつつも、最終的にはハッピーエンドを迎えるという特徴があります。エリザベス朝時代、ロマンスは観客に希望と慰めを与えるエンターテイメントとして人気を博しました。ペリクリーズは、嵐や海賊、誘拐といった波乱万丈な冒険物語を通じて、主人公が運命に翻弄されながらも、最終的には家族との再会を果たすという、まさにロマンスの典型的なパターンを描いています。
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古代世界への憧憬と異国への興味
ペリクリーズの舞台は、ギリシャや小アジアなど、古代世界の広範囲にわたります。エリザベス朝時代の人々にとって、古代世界は文明と文化の発祥の地として憧れの対象でした。シェイクスピアは、当時の観客のそう러한憧憬に応えるかのように、エキゾチックな舞台設定や神話的な要素を作品に盛り込んでいます。同時に、ペリクリーズは、異文化との接触や衝突、旅の危険性など、当時のイギリスが直面していた現実的な問題も反映しています。
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摂理と運命に対するエリザベス朝的世界観
ペリクリーズの物語は、主人公が数々の試練を乗り越え、最終的には神の摂理によって幸福を掴むという展開を見せます。これは、当時のキリスト教的世界観を色強く反映しています。エリザベス朝の人々は、人間の運命は神によって定められており、善行は報われ、悪行は罰せられると信じていました。ペリクリーズの物語は、そうした倫理観や道徳観を観客に再確認させる役割も担っていたと考えられます。
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父権制社会と女性の立場
ペリクリーズには、ペリクリーズの娘セーザ、アンティゴナス王の娘マリーナなど、重要な役割を果たす女性たちが登場します。彼女たちは、男性中心の社会の中で、貞潔や従順を求められる一方で、知性や勇気を発揮して自らの運命を切り開こうとする強さも見せます。ペリクリーズは、エリザベス朝社会における女性の立場や役割、そして彼女たちが直面していた困難を浮き彫りにしています。
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劇場と観客の相互作用
ペリクリーズは、当時の劇場の構造や観客の嗜好を反映した作品でもあります。例えば、劇中には観客に語りかけるような台詞や、歌や踊りといった娯楽要素が頻繁に登場します。また、舞台装置や衣装も比較的簡素で、観客の想像力に訴えかける演出が重視されていました。シェイクスピアは、観客の反応を見ながら台詞や演出を調整し、観客を作品世界に引き込むことに長けていました。