シェイクスピアのヘンリー四世 第一部に影響を与えた本
サミュエル・ダニエル著「イングランド内乱史」
シェイクスピアが歴史劇の題材に利用した主要な資料の一つは、ラファエル・ホリンシェッドの「年代記」の第2版（1587年）でしたが、サミュエル・ダニエルの叙事詩「イングランド内乱史」（初版1595年）もヘンリー四世 第一部の執筆に影響を与えた可能性があります。ダニエルは1599年に叙事詩を出版し続け、最終的に8巻になりました。シェイクスピアは間違いなくホリンシェッドの年代記を知っていましたが、ダニエルの叙事詩では、ホットスパーの勇敢で衝動的な性格など、劇中で見られる特定の美的選択や特徴付けの選択について、より説得力のある説明が提供されています。
ホリンシェッドの年代記では、ホットスパーはヘンリー四世の治世中に大人の男性として描かれていますが、ダニエルの詩やシェイクスピアの劇では、彼はハル王子と同年代の若者として描かれています。ダニエルは、ホットスパーの燃えるような衝動性を強調することで、この人物に焦点を当てています。ダニエルの叙事詩では、ホットスパーは「激しい情熱の炎」を持つ人物として特徴付けられています。同様に、シェイクスピアも劇の中で、ホットスパーを気性と激しさが特徴の人物として描写しています。実際、ホットスパーは常に激しいエネルギーを持っているため、妻であるケイトは彼を落ち着かせることさえできません。
ホットスパーの人物像に対するダニエルの影響は、第一幕第三場の劇的な独白にはっきりと表れており、この中でホットスパーは、策略家で皮肉屋のウスター伯である自分の叔父に対して、ヘンリー王への反乱への支持が不足していることに腹を立てています。ダニエルの叙事詩では、ウスター伯は陰謀を企て、反乱を「扇動」した人物として描写されていますが、後に「臆病」になってホットスパーと彼の反乱軍を見捨てています。その結果、ホットスパーは激怒し、激高し、「激怒」の炎の中で自分自身を消耗しています。シェイクスピアも劇中でこの動揺した状態を描写しており、ホットスパーは自分の激情を抑えきれないため、ウスター伯の策略に対して激しく非難しています。
要約すると、シェイクスピアがホリンシェッドの年代記からヘンリー四世の歴史をある程度知っていたことは明らかですが、ダニエルの「イングランド内乱史」のホットスパーの描写は、劇中、特にホットスパーの燃えるような性格と制御できない怒りの描写に影響を与えた可能性があります。シェイクスピアの資料に関する学術的な議論では、劇中の登場人物や筋書きの発展におけるダニエルの詩の影響の可能性について、さらに検討する必要があります。