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シェイクスピアのヘンリー六世 第三部から学ぶ時代性

## シェイクスピアのヘンリー六世 第三部から学ぶ時代性

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王権と支配の不安定さ

「ヘンリー六世 第三部」は、バラ戦争の混乱期を描写し、王権という概念自体が大きく揺らぐ様を鮮やかに描き出しています。正当な王位継承者であるヘンリー六世は、弱腰で決断力に欠け、周りの貴族たちに翻弄され続けます。彼の統治能力の欠如は、ヨーク公リチャードの台頭を許し、王権争いの火種となります。

この王権をめぐる争いは、単なる個人間の抗争ではなく、中世から近代へと移り変わる時代の不安定さを象徴しています。封建制度の崩壊、新興勢力の台頭、そして宗教改革の波など、当時のイングランドは大きな変革期にありました。人々は、伝統的な価値観と新しい思想の間で揺れ動き、社会全体が不安定な状況に陥っていたと言えるでしょう。

劇中で描かれる残虐行為や裏切りは、権力というものがいかに不安定で、危険なものになり得るかを観客に突きつけます。同時に、王権というものの正統性や、真のリーダーシップとは何かという問いを投げかけています。

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社会の階層と上昇志向

「ヘンリー六世 第三部」は、貴族社会の内部抗争だけでなく、社会階層の変動や上昇志向をも浮き彫りにしています。ヨーク公リチャードは、自らの野望を達成するため、貴族としての特権意識を剥ぎ取られた民衆の不満を巧みに利用します。

リチャードの演説は、民衆の心に響く力強い言葉で語られ、彼らの社会に対する不満や向上心を煽り立てます。これは、当時の社会においても、身分秩序に対する疑問や、個人の能力による社会的地位の向上を望む声が上がっていたことを示唆しています。

劇中で描かれる社会階層の流動性は、当時のイングランドが、古い秩序から新しい秩序へと移行しつつあったことを示唆しています。

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戦争の悲劇と人間の残虐性

「ヘンリー六世 第三部」は、バラ戦争の壮絶な戦いを描き出す一方で、戦争がもたらす悲劇や人間の残虐性を容赦なく描いています。戦場で命を落とすのは、王や貴族だけでなく、罪のない一般市民も含まれます。

特に、ヨーク公リチャードによるヘンリー六世の息子、エドワードの殺害シーンは、権力闘争の残酷さを象徴する場面として観客に強い印象を与えます。戦争は、人間の道徳観念を麻痺させ、残虐行為を正当化する恐ろしい側面を持つことを、シェイクスピアは劇を通して訴えかけていると言えるでしょう。

劇中で描かれる戦争の悲劇は、現代社会においても通じる普遍的なテーマです。権力闘争やイデオロギー対立によって、無辜の人々が犠牲になる現実を突きつけ、平和の尊さ、人間の尊厳について改めて考えさせる力を持っています。

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