シェイクスピアのヘンリー六世 第一部の関連著作
エドワード・ホールの年代記
シェイクスピアは「ヘンリー六世 第一部」の執筆において、さまざまな歴史書を参照しましたが、中でも特に重要なのがエドワード・ホールの『The Union of the Two Noble and Illustre Families of Lancaster and York(ランカスター家とヨーク家の二大名家の統合)』です。1548年に出版されたこの年代記は、薔薇戦争を含むイングランド史を包括的に網羅しており、シェイクスピアに劇中の多くの出来事や登場人物に関する情報源を提供しました。シェイクスピアはホールの年代記に綴られたドラマチックな語り口に影響を受けたと考えられており、史実の脚色に長けたホールの作風は「ヘンリー六世 第一部」にも見られます。
ラファエル・ホリンシェッドの年代記
「ヘンリー六世 第一部」のもう一つの重要な資料となったのが、ラファエル・ホリンシェッドによる『Chronicles of England, Scotland, and Ireland(イングランド、スコットランド、アイルランド年代記)』です。1577年に出版されたホリンシェッドの年代記は、シェイクスピアの時代における歴史的事実に関する決定版といえるものでした。シェイクスピアは「ヘンリー六世 第一部」だけでなく他の歴史劇においても、ホリンシェッドの年代記を情報源として大いに参考にしています。ホリンシェッドの年代記は、歴史上の出来事の正確な時系列や詳細な描写を提供しており、シェイクスピアはそれを劇中の出来事や登場人物の構築に役立てました。
これらの歴史書は、「ヘンリー六世 第一部」の創作においてシェイクスピアに貴重な資料を提供しました。シェイクスピアは史実に対して独自の解釈を加えながらも、これらの資料に基づき、登場人物や出来事を劇的に表現することに成功したのです。