## シェイクスピアのヘンリー六世 第一部の主題
統治の不安定さと内乱の勃発
「ヘンリー六世 第一部」は、幼くして即位したヘンリー六世の治世初期を描写し、イングランド王位継承の不安定さがもたらす混乱と内乱を主題の一つとしています。百年戦争で勝利を収めたヘンリー五世の死後、わずか９ヶ月のヘンリー六世が王位を継承しますが、彼の幼少と統治能力の欠如は、周囲の貴族たちの権力闘争を激化させます。
劇は、グロスター公爵ハンフリーとウィンチェスター司教ヘンリー・ボーフォートの対立を中心に展開します。摂政の座を巡る彼らの争いは、宮廷内での陰謀や策略を生み出し、国家の安定を揺るがします。特に、第１幕第１場の彼らの口論は、この権力闘争が後の薔薇戦争へと発展していくことを予感させます。
フランスにおけるイングランドの衰退
百年戦争末期におけるイングランドのフランス領土喪失も、劇の重要な主題です。ヘンリー五世の代に獲得した広大なフランス領土は、ヘンリー六世の治世下で次々と失われていきます。
特に、フランスの国民的英雄ジャンヌ・ダルクの登場は、イングランド軍の士気を低下させ、劣勢を決定的なものにします。劇中でジャンヌ・ダルクは、超自然的な力を駆使してイングランド軍を翻弄する存在として描かれ、イングランドの衰退とフランスの台頭を象徴しています。
オルレアン包囲戦での敗北は、イングランドにとって大きな転換点となります。この敗北は、単なる軍事的な敗北ではなく、イングランドの運命そのものが衰退に向かっていることを示唆しています。