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シェイクスピアのヘンリー六世 第一部から学ぶ時代性

## シェイクスピアのヘンリー六世 第一部から学ぶ時代性

フランスとの百年戦争と国家意識の萌芽

「ヘンリー六世 第一部」は、百年戦争の末期、フランスとの戦況が悪化する中、イングランドで勃発する内乱の始まりを描いています。 作品は、フランス軍に包囲されたオルレアンを、後に「オルレアンの乙女」と呼ばれることになるジャンヌ・ダルクが解放する劇的な場面から始まります。 この場面は、当時のイングランドが、フランスという外部の敵に対して、いかに苦しい戦いを強いられていたのかを如実に示しています。

しかし、この作品が描き出すのは、単なる外国との戦争だけではありません。 作品を通して、フランスという共通の敵に対抗することで、イングランド人としての国家意識が、次第に芽生え始めていく様子が見て取れます。 これは、百年戦争という未曾有の事態が、イングランドの人々に、それまでになかった「国家」という概念を意識させ始めたことを示唆しています。

内部抗争と薔薇戦争の勃発

一方、「ヘンリー六世 第一部」は、百年戦争という対外的な危機と同時に、イングランド国内で貴族たちが権力争いを繰り広げる様子も描いています。 特に、ヨーク家とランカスター家の対立は、後の薔薇戦争へと発展していく、この時代のイングランドにおける最も重要な政治的対立軸の一つです。

この作品では、ヨーク公とサマセット公が、ヘンリー六世の面前で公然と罵り合い、互いの正当性を主張する場面が登場します。 このような貴族たちの対立は、単なる個人的な権力欲を超えて、封建制度の矛盾や、王権の弱体化といった、当時のイングランド社会が抱えていた根深い問題を反映しています。

中世社会の価値観と変化の兆し

「ヘンリー六世 第一部」には、上記の戦争や政治的対立といった大きな歴史的事件だけでなく、当時のイングランド社会の価値観や人々の暮らしを垣間見ることができる場面も数多く登場します。 例えば、ジャンヌ・ダルクが魔女として告発され、火刑に処される場面は、当時の宗教観や女性観を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。

一方で、作品全体を通して、中世社会の伝統的な価値観が、戦争や内乱によって揺さぶりをかけられ、新たな時代へと移り変わろうとする、変化の兆しも感じ取ることができます。 この作品は、単に歴史上の出来事を描いたものではなく、激動する時代の中で、人間がどのように生きたのかを描き出すことで、現代社会にも通じる普遍的なテーマを提示しています。

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