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シェイクスピアのヘンリー八世の評価

## シェイクスピアのヘンリー八世の評価

批評史

シェイクスピアのヘンリー八世は、上演史と批評史において、その複雑な評価と変遷を辿ってきました。初演は1613年と記録されていますが、その10年後にはすでに「あまりにも一般的で平凡な歴史劇」と評されていました。しかし、19世紀に入ると、ロマン主義の影響を受け、人間の内面や感情を描写した作品として再評価されるようになります。特に、主人公であるヘンリー八世の心理描写や、権力と愛憎に翻弄される登場人物たちの姿は、多くの批評家たちの注目を集めました。

劇作上の特徴

ヘンリー八世は、シェイクスピアの他の歴史劇と比較して、いくつかの点で異なっています。まず、この作品は、善悪二元論で割り切れない複雑な人間関係を描いている点が挙げられます。従来の歴史劇では、明確な敵対関係を持つ人物が登場し、彼らの対立が劇的な展開を生み出していました。しかし、ヘンリー八世では、登場人物たちの関係がより流動的で、それぞれの立場や思惑が複雑に絡み合っています。

また、ヘンリー八世は、他の歴史劇と比較して、女性登場人物の存在感が大きい作品でもあります。特に、王妃キャサリンとアン・ブーリンの対比的な描き方は、多くの批評家の関心を集めてきました。キャサリンは、伝統的な価値観を体現する高潔な女性として描かれる一方、アン・ブーリンは、野心家で狡猾な女性として描かれています。これらの女性たちの姿は、当時の社会における女性の立場や、男性中心社会における女性の生き方を浮き彫りにするものでした。

上演における課題

ヘンリー八世は、その壮大なスケールと登場人物の多さから、上演が難しい作品としても知られています。特に、宗教改革や王位継承問題など、当時のイングランド社会を揺るがす大きな出来事を背景にしているため、舞台装置や衣装にも、相当な費用と労力がかかります。また、登場人物たちの複雑な心理描写を表現するためには、高い演技力が求められます。

解釈の可能性

ヘンリー八世は、歴史劇というジャンルに属しながらも、権力、野心、愛、道徳といった普遍的なテーマを扱っており、現代社会にも通じる問題提起を含んでいます。そのため、時代や文化を超えて、様々な解釈が可能な作品と言えるでしょう。例えば、フェミニズム批評の観点からは、女性登場人物たちの描き方や、男性中心社会における女性の立場などが分析されています。また、政治劇としての側面からは、権力闘争や宗教改革がもたらす社会への影響などが考察されています。

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