シェイクスピアのヘンリー八世の技法
登場人物描写
劇中でシェイクスピアが用いる登場人物描写の技法の一つに、対照的な人物配置があります。
たとえば、劇の冒頭で描かれるバッキンガム公は高潔で、王の寵臣ウルフジー枢機卿の野心と腐敗の犠牲者として描かれます。バッキンガム公の正直さとウルフジー枢機卿の狡猾さという対比によって、観客はバッキンガム公に同情し、ウルフジー枢機卿を劇の悪役とみなすようになります。
シェイクスピアは登場人物に長広な独白を語らせ、その内面を明らかにする手法も用いています。たとえば、第3幕第2場のウルフジー枢機卿の有名な独白で、彼は自身の失脚と権力の虚しさを嘆きます。この独白によって、観客はウルフジー枢機卿の心の葛藤を垣間見ることができ、彼に対する同情の念を抱くようになります。