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シェイクスピアのヘンリー八世の感性

## シェイクスピアのヘンリー八世の感性

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戯曲全体を貫く曖昧なトーン

「ヘンリー八世」は、歴史劇、悲劇、ロマンス、道徳劇など、様々なジャンルに分類されることがありますが、そのいずれにも完全には当てはまりません。この曖昧さは、戯曲の感性にも反映されており、観客は登場人物や出来事に対して、純粋な賛美や非難のどちらか一方に偏ることなく、複雑な感情を抱くことになります。

例えば、ヘンリー八世自身は、冷酷な暴君として描かれる一方で、愛情深く、敬虔な王としての側面も見られます。キャサリン王妃の悲劇的な運命には同情が集まりますが、アン・ブーリンの台頭と王妃としての戴冠もまた、ある種の希望と祝福を感じさせます。

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摂理と自由意志のせめぎ合い

「ヘンリー八世」では、歴史の大きな流れの中で翻弄される人間の姿が描かれています。登場人物たちは、自らの意志で行動しているように見えても、最終的には不可解な摂理に導かれているようにも感じられます。

特に、キャサリン王妃の失脚やアン・ブーリンの栄光と転落は、人間の栄枯盛衰の無常さを強く印象付けます。一方で、クランマー大司教のように、逆境にあっても信念を貫き通す人物も描かれており、運命に対する人間の抵抗と希望も示唆されています。

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壮大なスケールと個人的なドラマの融合

「ヘンリー八世」は、イングランド宗教改革という歴史的事件を背景に、登場人物たちの個人的なドラマが展開される作品です。壮大な歴史絵巻の中で、愛憎、野心、嫉妬、信仰といった普遍的な人間の感情が鮮やかに描かれています。

宮廷内の権力闘争や宗教改革の嵐のような展開は、観客に国家の運命と個人の運命が複雑に絡み合っていることを実感させます。また、王妃たちの悲劇や廷臣たちの栄枯盛衰を通して、歴史の裏側にある人間の感情を生々しく浮かび上がらせています。

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