## シェイクスピアのヘンリー八世の思想的背景
宗教改革
「ヘンリー八世」は、イギリス宗教改革の真っ只中に書かれた作品です。劇は、ヘンリーがキャサリン・オブ・アラゴンとの結婚を無効にし、アン・ブーリンと結婚しようとする試みを描いています。この行為は、ローマ・カトリック教会との断絶、そしてイングランド国教会の設立につながりました。
劇中で、宗教改革の影響は様々な場面で見られます。例えば、廷臣たちの会話は、宗教改革に対する賛否両論の意見を反映しています。また、キャサリンの裁判シーンは、宗教的な権威と王権の対立を象徴的に表しています。
王権神授説
「ヘンリー八世」は、王権神授説、つまり国王の権力は神から与えられたものであるという思想が色濃く反映された作品でもあります。劇中で、ヘンリーは自らの行動を正当化するために、繰り返し神の意志を主張します。
一方で、劇は王権の乱用についても言及しています。例えば、ウルジー枢機卿の失脚は、絶対的な権力を持つことの危険性を示唆しています。
歴史観
「ヘンリー八世」は、歴史劇として、歴史に対するシェイクスピアの視点を垣間見ることができます。劇は、歴史的事実を忠実に再現しているわけではありません。シェイクスピアは、劇的な効果を高めるために、事実を脚色したり、登場人物の性格を誇張したりしています。
特に注目すべきは、劇の結末です。史実では、アン・ブーリンは後にヘンリーによって処刑されますが、劇では、アンはエリザベス一世を出産し、祝福されます。これは、エリザベス朝時代の観客にアピールするための演出と考えられています。