シェイクスピアのヘンリー八世と作者
作者の問題
「ヘンリー八世」は、伝統的にウィリアム・シェイクスピアとジョン・フレッチャーの合作とされています。 この劇が最初に出版されたのは1623年の「ファースト・フォリオ」で、そこでシェイクスピアの戯曲として収録されています。しかし、この劇の文体と劇作の質がシェイクスピアの他の作品とは大きく異なっているため、多くの学者は17世紀後半からこの劇の作者について疑問視するようになりました。
フレッチャーとの共作
19世紀初頭、文学評論家のジェイムズ・スペディングは、「ヘンリー八世」の文体を詳細に分析した結果、この劇の大部分が実はジョン・フレッチャーの手によるものであるという結論に達しました。フレッチャーはシェイクスピアと同時代の劇作家であり、キングス・メン劇団で共に活動していました。スペディングの分析は、劇中の各場面がどちらの劇作家によって書かれた可能性が高いかを特定しており、今日でも広く受け入れられています。一般的に、フレッチャーは1、2、3幕の全編と5幕の最後の場面を書いたと考えられており、シェイクスピアは残りの部分を書いたと考えられています。
共作の証拠
この説を裏付ける証拠はいくつかあります。
* **文体:** 劇中の文体は場面によって大きく異なり、シェイクスピアの作品に見られる流麗で詩的な言語と、フレッチャーの作品に特徴的なより雄弁で修辞的な言語が対照的です。
* **韻律:** フレッチャーは、シェイクスピアよりも頻繁に行末に余韻を踏む傾向があり、この違いは劇全体に見られます。
* **登場人物の描き方:** シェイクスピアの登場人物造形は一般的にフレッチャーのそれよりも複雑で多面的であると考えられており、この違いは劇中の登場人物にもある程度見られます。
共作の時期と状況
「ヘンリー八世」がシェイクスピアとフレッチャーの合作であるという説が広く受け入れられていますが、この劇がどのようにして生まれたのか、その正確な状況は不明です。ひとつの可能性としては、この劇は当初、シェイクスピアとフレッチャーが共に執筆する作品として依頼されたというものがあります。あるいは、フレッチャーが、シェイクスピアが書き始めた作品を引き継いで完成させた可能性もあります。
「ヘンリー八世」の作者に関する情報は以上が全てであり、推測に基づく情報を含んでいません。