シェイクスピアのトロイラスとクレシダの関連著作
ホメーロスの「イーリアス」
「トロイラスとクレシダ」はトロイア戦争を題材としていますが、シェイクスピアはプロットの主要なインスピレーションとしてホメーロスの叙事詩「イーリアス」を直接的には使用していません。ホメーロスの作品は、アキレウスの怒りとトロイア戦争の最後の数週間を中心に描かれており、トロイラスとクレシダのロマンスについては触れられていません。
ジェフリー・チョーサーの「トロイラスとクリセイデ」
シェイクスピアの劇の主な資料は、ジェフリー・チョーサーの14世紀の詩「トロイラスとクリセイデ」です。チョーサーの作品自体は、12世紀のフランス人詩人ブノワ・ド・サント=モールによる「ルオマン・ド・トロイユ」から着想を得ています。チョーサーの詩は、トロイアの王子トロイラスとギリシャの司祭カルカスの娘クリセイデとの間の恋と、その後の別れに焦点を当てています。シェイクスピアはチョーサーの登場人物とプロットの大枠を借用していますが、登場人物の性格や関係性に大きな変更を加え、オリジナルの詩にはない皮肉と風刺の要素を劇に吹き込んでいます。
他の関連する著作
シェイクスピアは、「トロイラスとクレシダ」の執筆にあたり、チョーサーの作品以外にも、他のいくつかの資料を参照した可能性があります。これらには、ギリシャ神話の他の作品や、ウィリアム・キャクストンによる「Recuyell of the Historyes of Troye」などの、中世とルネサンスのトロイア戦争に関する作品が含まれます。しかし、シェイクスピアの劇へのこれらの作品の正確な影響は、推測の域を出ません。