## シェイクスピアのトロイラスとクレシダの美
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言語の美
「トロイラスとクレシダ」は、シェイクスピアの言語の巧みさが光る作品です。劇全体を通して、登場人物たちの感情の起伏や葛藤を鮮やかに描き出す、比喩表現や言葉遊びがふんだんに用いられています。
例えば、トロイラスがクレシダへの愛を告白する場面では、
>「あなたの明るい目は、私の航海の星です。
>
>その光がなければ、私は暗闇の海をさまようばかり。」
と、美しい比喩表現を用いて、彼の熱い想いを表現しています。
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対比の妙
「トロイラスとクレシダ」では、対照的な要素を並置することによって、それぞれの要素をより際立たせる手法が効果的に用いられています。
例えば、トロイラスの純粋で理想主義的な愛情と、クレシダの現実的で打算的な態度の対比、勇敢なヘクターと皮肉屋のユリシーズの対比などが挙げられます。これらの対比を通して、愛と戦争、名誉と裏切りといった、普遍的なテーマが浮かび上がってきます。
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人間の弱さへの洞察
シェイクスピアは、この作品において、戦争の悲惨さや人間の愚かさ、弱さを容赦なく描き出しています。
英雄とされるトロイラスやアキレスでさえ、愛や名誉のために苦悩し、時には愚かな行動をとってしまう姿を通して、人間存在の複雑さや脆さが浮き彫りになっています。