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シェイクスピアのトロイラスとクレシダの批評

## シェイクスピアのトロイラスとクレシダの批評

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ジャンル

曖昧なジャンル分け:

「トロイラスとクレシダ」は、分類が難しい作品として知られています。初版の出版記録である「Stationers’ Register」では、「コメディ」として登録されました。しかし、実際に出版された quarto 版のタイトルページには、「The Historie of Troylus and Cresseida」と記され、「歴史劇」としての側面も持ち合わせています。

内容的には、トロイ戦争を背景に、トロイの王子トロイラスとギリシャ軍に捕らえられたクレシダの悲恋を描いており、純粋な「コメディ」と呼ぶにはあまりにもシリアスで皮肉的な要素が強いです。 一方で、「歴史劇」と呼ぶには史実との乖離が大きく、登場人物たちの心理描写や人間関係の複雑さに重点が置かれています。

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テーマ

多岐にわたるテーマ:

「トロイラスとクレシダ」は、愛、名誉、戦争、時間、価値観の変遷など、多岐にわたるテーマを扱っています。

* **愛:** トロイラスとクレシダの恋愛は、物語の中心となるテーマです。しかし、彼らの愛は、戦争や社会的な圧力によって引き裂かれてしまい、永遠に続くことはできません。この悲恋を通して、シェイクスピアは、理想と現実のギャップ、愛の脆さ、そして裏切りといったテーマを浮き彫りにします。

* **名誉:** アキレウスやヘクターといった英雄たちは、名誉を非常に重要なものとして捉えています。しかし、彼らの名誉への執着は、しばしば傲慢さや残酷さへとつながり、悲劇的な結末を招きます。作品を通して、シェイクスピアは、名誉の虚しさや、それがもたらす破壊的な側面を描写しています。

* **戦争:** トロイ戦争は、物語の背景として、重要な役割を果たしています。シェイクスピアは、戦争の愚かさや残虐さを、戦闘シーンだけでなく、登場人物たちの会話や行動を通して表現しています。 特に、ギリシャ軍とトロイ軍の両方が、戦争の目的や意味を見失い、ただ惰性的に戦い続けている様子が描かれています。

* **時間:** 作品全体を通して、時間は重要なテーマとして扱われています。 トロイラスとクレシダの愛は、時間の経過とともに変化し、最終的には消滅してしまいます。また、英雄たちの栄光も、時間の流れによって色褪せていくことが示唆されます。

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登場人物

複雑で人間的な描写:

「トロイラスとクレシダ」には、個性的な登場人物が多く登場します。

* **トロイラス:** トロイの王子で、クレシダに恋をする。純粋で情熱的な性格だが、若さゆえに衝動的で、理想主義的な面も持ち合わせている。

* **クレシダ:** ギリシャ軍に捕らえられたクレシダは、美しく機知に富んだ女性として描かれています。しかし、彼女は当時の社会の規範に縛られており、自分の意志で行動することが難しい立場にあります。

* **パンドゥラス:** トロイラスの叔父で、皮肉屋でシニカルな発言が多い人物。彼の言葉は、しばしば作品全体に漂う虚無感や諦念を象徴しています。

シェイクスピアは、これらの登場人物を善悪二元論で描くのではなく、それぞれの立場や葛藤、弱さを浮き彫りにすることで、複雑で人間的な存在として描き出しています。

これらの特徴が、「トロイラスとクレシダ」を解釈する上での多様性と複雑さを生み出し、多くの批評家たちの議論の的となっています。

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