Skip to content Skip to footer

シェイクスピアのトロイラスとクレシダの思想的背景

## シェイクスピアのトロイラスとクレシダの思想的背景

###

エリザベス朝におけるトロイ戦争

シェイクスピアの時代、トロイ戦争は歴史的事実として認識されており、ホメロスの叙事詩「イーリアス」や「オデュッセイア」を通じて広く知られていました。しかし、エリザベス朝の人々にとって、トロイ戦争は単なる過去の出来事ではなく、自国の歴史や文化と密接に結びついたテーマでもありました。

当時のイングランドは、スペインとの覇権争いや宗教改革など、激動の時代を迎えていました。こうした状況下で、トロイ戦争は、国家間の対立や戦争の悲惨さ、英雄たちの栄光と挫折といった普遍的なテーマを映し出す寓意として捉えられました。

###

中世の騎士道精神とルネサンスのヒューマニズム

「トロイラスとクレシダ」は、中世の騎士道物語の伝統を受け継ぎながら、ルネサンスのヒューマニズムの影響も色濃く反映した作品です。劇中には、騎士道の理想である名誉や恋愛、武勇を追求する登場人物たちが登場する一方、彼らの行動や心理は、より人間的で複雑な形で描かれています。

例えば、トロイラスは、クレシダへの愛のために騎士としての義務と葛
闘し、クレシダは、戦乱の渦中で愛と現実の間で苦悩します。こうした登場人物たちの姿は、当時の観客たちに、伝統的な価値観と新しい思想の狭間で揺れ動く人間の姿を想起させた可能性があります。

###

懐疑主義と風刺

「トロイラスとクレシダ」は、シェイクスピアの作品の中でも特に風刺の強い作品として知られています。劇中では、戦争の虚しさや英雄たちの偽善、恋愛の欺瞞などが、シニカルな視点で描かれています。

例えば、ギリシャ軍の英雄アキレウスは、武勇に優れた人物として描かれる一方で、自己中心的で残酷な側面も持ち合わせています。また、トロイ戦争のきっかけとなったヘレンは、絶世の美女として描かれる一方で、軽薄で無責任な人物として風刺されています。

このように、シェイクスピアは、伝統的な価値観や英雄像に対して、鋭い批判的な視点を投げかけています。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5