## シェイクスピアのトロイラスとクレシダの対称性
劇中の対称性を示す要素
シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』は、トロイア戦争を背景に、トロイアの王子トロイラスとギリシャ軍に捕らえられた預言者カルカスの娘クレシダの悲恋を描いた作品です。この作品は、戦争と愛という対照的なテーマを中心に、様々な対称性を織り交ぜることで、複雑な人間模様を浮き彫りにしています。
トロイア陣営とギリシャ陣営
最もわかりやすい対称性は、トロイア陣営とギリシャ陣営の対比です。劇は、両陣営の武勇と愚かさ、高潔さと卑劣さを対比的に描くことで、戦争の本質に迫ります。例えば、トロイアの英雄ヘクトルは武勇に優れながらも、ギリシャの武将アキレウスとの一騎打ちで非業の死を遂げます。一方、ギリシャの知将ユリシーズは、策略を駆使してトロイアを陥れようとします。
トロイラスとクレシダ
主人公であるトロイラスとクレシダの関係もまた、対称性を帯びています。純粋な愛を誓い合う二人ですが、クレシダは捕虜交換によってギリシャ陣営へと送られることになります。トロイラスはクレシダの愛を信じようとしますが、彼女はギリシャの武将ディオメデスに心を移してしまう。
愛と戦争
『トロイラスとクレシダ』は、愛と戦争という対照的なテーマを対称的に描くことで、人間の理想と現実の相克を浮き彫りにします。トロイラスとクレシダの悲恋は、戦争という過酷な現実がいかに純粋な愛を踏みにじるかを痛感させます。
言葉遊び
シェイクスピアは、言葉遊びを多用することで、劇中の対称性を強調しています。例えば、トロイラスとクレシダの会話には、愛の誓いと思わせぶりな言葉遊びが散りばめられており、二人の関係の脆さを暗示しています。また、登場人物たちは皮肉や風刺を込めた言葉を駆使することで、戦争の愚かさや人間の滑稽さを浮き彫りにします。