## シェイクスピアのテンペストから学ぶ時代性
植民地主義と帝国主義
「テンペスト」は、16世紀後半から17世紀にかけてヨーロッパを席巻した植民地主義と帝国主義の隆盛期に書かれました。劇中で描かれる、魔法使いプロスペローが島に漂着し、原住民キャリバンを支配下に置く様子は、当時のヨーロッパ諸国による新大陸進出と、その過程で先住民に対して行われた征服と搾取を彷彿とさせます。
プロスペローは、キャリバンに対して言語や知識を教え、文明化しようとしますが、それはあくまでプロスペローの価値観に基づいたものであり、キャリバンの文化やアイデンティティを尊重したものではありません。キャリバンは、プロスペローの支配に対して抵抗を試みますが、魔法の力によって抑圧され、奴隷のような扱いを受けます。
ルネサンス期の人間観
「テンペスト」は、ルネサンス期の人間中心主義的な世界観を反映しています。プロスペローは、魔法の力を駆使して自然を操り、自分の意志に従わせようとします。これは、人間が理性や知識によって自然を理解し、制御することを目指したルネサンス期の思想と重なります。
一方で、劇中には、自然の力強さや人間の力では制御できない運命の不可思議さも描かれています。嵐によって島に漂着した人々は、プロスペローの魔法によって翻弄され、自分の運命をコントロールすることができません。
階級社会と支配
「テンペスト」では、プロスペローとキャリバンだけでなく、貴族であるナポリ王とアントーニオ、その従者であるゴンザロー、船乗りなど、さまざまな階層の人物が登場します。プロスペローは、魔法の力によって他の登場人物たちを操り、自分の望む結末へと導こうとします。
これは、当時の社会における階級秩序や権力構造を反映しています。絶対君主制の下、王や貴族は絶大な権力を持ち、庶民はそれに従うことが当然とされていました。劇中では、プロスペローの魔法が権力の象徴として機能し、登場人物たちの関係性を浮き彫りにしています。