## シェイクスピアのタイタス・アンドロニカスの評価
上演史
「タイタス・アンドロニカス」は、シェイクスピアの初期の作品で、1594年頃に初演されたと考えられています。記録に残っている限りでは、1594年1月24日に「タイタス・アンドロニカス」が上演されたという記録が最古のものとされており、これは、フィリップ・ヘンズローの日記に「ロード・ストレンジ一座の新しい芝居『タイタス・アンドロニカス』」という記述が残されているためです。その後も16世紀末から17世紀初頭にかけて人気を博し、複数回再演された記録が残っています。1623年に出版されたシェイクスピアの作品集「ファースト・フォリオ」にも収録されています。
批評家の反応
「タイタス・アンドロニカス」は、その残酷な描写と復讐の連鎖が特徴的な作品です。この劇は、長年にわたって批評家の間で評価が分かれてきました。17世紀から18世紀にかけては、その過剰な暴力描写が敬遠されがちでした。例えば、18世紀の文芸批評家サミュエル・ジョンソンは、「タイタス・アンドロニカス」の残酷描写を「吐き気を催すほど嫌悪感を与える」と酷評しています。
しかし、19世紀後半から20世紀にかけて、劇作家の意図や当時の時代背景を考慮した再評価が進みました。その結果、「タイタス・アンドロニカス」は、ローマ帝国の退廃と人間の復讐心の恐ろしさを描いた力強い作品として評価されるようになり、現代では、その暴力描写は、当時の社会における暴力の蔓延や、権力闘争の残酷さを象徴的に表現しているものとして解釈されるようになっています。
作品のテーマと特徴
「タイタス・アンドロニカス」の主要なテーマとしては、復讐と正義、権力と野望、秩序と混沌などが挙げられます。これらのテーマは、ローマ帝国を舞台に、主人公タイタス・アンドロニカス将軍とその一族、そしてゴート族の女王タモーラとその一族の争いを通して描かれます。
特徴的な点としては、シェイクスピアの他の作品と比較して、残酷な描写が多いことが挙げられます。劇中には、殺人、強姦、切断、食人など、目を覆いたくなるようなシーンが数多く登場します。また、登場人物たちの多くが、復讐心や権力欲に駆られており、彼らの狂気じみた行動が、悲劇的な結末へと繋がっていく様子が描かれています。