## シェイクスピアのジョン王と時間
時間の流れの曖昧さ
「ジョン王」では、時間の流れが曖昧に描かれている点が特徴的です。劇中の出来事は、歴史的な時系列に従ってはいますが、具体的な年月の言及はほとんどありません。
例えば、アーサーの死や、ジョン王のフランス侵攻と敗北といった大きな出来事が、比較的短い期間に凝縮して描かれています。これは、シェイクスピアが歴史的正確さよりも、登場人物たちの心理的な変化や政治的駆け引きに焦点を当てているためと考えられます。
時間の圧縮による効果
時間の流れが圧縮されていることで、劇は緊迫感とスピード感を持ちます。観客は、登場人物たちと同様に、目まぐるしく変化する状況に翻弄され、息つく暇もなく物語に引き込まれていきます。
また、時間の圧縮は、ジョン王の統治の不安定さと、彼の没落の inevitability を強調する効果も持っています。まるで、ジョン王の周囲では時間が加速し、彼の破滅へと突き動かしているかのようです。
時間と運命
「ジョン王」では、時間は単なる流れではなく、登場人物たちの運命を左右する力として描かれています。
例えば、アーサーは、自分が王位継承者となるべき運命にあることを、周囲の人間から繰り返し告げられます。そして、その運命に翻弄され、悲劇的な死を迎えることになります。
また、ジョン王自身も、時間の流れに逆らうことができず、自らの野心と罪によって破滅へと導かれていきます。
時間の象徴
劇中には、時間を象徴するモチーフがいくつか登場します。
例えば、冒頭に登場する「太陽と月」は、時間の流れと、それに伴う変化を象徴しています。また、「時計」や「鐘」といった小道具も、時間の経過を意識させる役割を担っています。
これらのモチーフは、時間の流れの不可逆性と、それに翻弄される人間の姿を、より鮮明に浮かび上がらせる効果を持っています。