## シェイクスピアのジョン王から学ぶ時代性
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王権と神授説
「ジョン王」は、正当性や能力に関わらず、王は神の代理人として統治する権利を持つという、当時の西洋社会に深く根付いていた「王権神授説」という概念に真っ向から挑む作品です。 ジョン王は、王位継承の正当性に疑問符が付く中で、自身の権力を正当化しようと苦悩します。しかし、彼の傲慢で残酷な支配は、民衆や貴族の反発を買い、イングランドは内乱状態に陥ります。
この作品を通して、シェイクスピアは、王権の源泉が民衆の支持にあることを暗に示唆しています。ジョン王の失墜は、単に彼の資質の問題だけでなく、時代が変化し、人々の意識が「生まれながらの権利」や「支配者と被支配者の契約」といった概念へと移り変わっていく兆候を象徴しているとも解釈できます。
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政治と宗教の対立
当時のイングランドは、カトリックとプロテスタントの対立が激化する時代でした。ジョン王は、ローマ教皇と対立し、イングランド教会の独立を主張します。 しかし、この行動は、国内外の敵対勢力を勢いづけ、ジョン王は政治的に窮地に立たされます。
シェイクスピアは、この作品の中で、政治と宗教が複雑に絡み合い、国家や個人の運命を大きく左右する様を描いています。 宗教は、権力闘争の道具として利用され、人々の信仰心は、しばしば政治的な思惑によって揺さぶられます。 このような宗教と政治の対立は、現代社会においても重要なテーマであり、「ジョン王」は、私たちにその本質を鋭く問いかけています。
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国家と個人の葛藤
「ジョン王」には、様々な立場の人物が登場し、愛国心、野心、忠誠心、裏切りなど、人間の複雑な感情が描かれています。 例えば、ジョン王の腹心であるフィリップ・フォーコンブリッジは、最初は王に忠誠を誓いますが、次第に良心と愛国心の狭間で苦悩し、最終的には王に反旗を翻します。
このように、「ジョン王」は、国家や君主への忠誠と、個人の信念や良心との間で葛藤する人々の姿を描き出すことで、普遍的な人間のジレンマを浮き彫りにしています。 このような葛藤は、現代社会においても、私たちが日常的に直面する問題であり、「ジョン王」は、私たちに自己犠牲、責任、道徳といった重要なテーマについて深く考えさせてくれます。