シェイクスピアのジュリアス・シーザーが関係する学問
歴史
シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」は、紀元前44年のローマにおける、ジュリアス・シーザーの暗殺と、その後の出来事を題材にした作品です。シェイクスピアはこの作品で、ローマの歴史家プルタルコスの「対比列伝」を主な情報源としています。「対比列伝」は、ギリシャとローマの著名人たちの伝記を集めたもので、シーザー、ブルータス、アントニーなど、「ジュリアス・シーザー」の登場人物たちの生涯についても詳しく書かれています。シェイクスピアはプルタルコスの記述を忠実に劇に反映しており、登場人物たちの性格や人間関係、歴史的事件の描写などは、プルタルコスの記述に基づいています。
政治学
「ジュリアス・シーザー」は、政治的な陰謀、権力闘争、民衆操作といったテーマを扱っており、政治学の観点からも興味深い作品です。劇中では、共和制と独裁制、自由と秩序、理想と現実といった政治的な対立軸が描かれ、登場人物たちはそれぞれの信念に基づいて行動します。例えば、ブルータスは共和制の理想を信じ、シーザーの独裁を阻止するために暗殺に加担しますが、アントニーはシーザー個人への忠誠心から、暗殺者たちに復讐しようとします。また、劇中では、民衆の心理や政治家のレトリックが巧みに描かれており、政治におけるプロパガンダや大衆操作のメカニズムを理解する上でも示唆に富んでいます。
倫理
「ジュリアス・シーザー」は、登場人物たちの道徳的な葛藤や倫理的なジレンマを通して、人間の複雑な心理や行動原理を浮き彫りにしています。例えば、ブルータスはシーザーを暗殺することが共和制の理念に合致すると考えますが、同時にシーザーを友人として慕ってもいます。この葛藤は、劇中で最も有名なセリフの一つである「来たれ、三月十五日！（Then fall, Caesar!）」の場面で最高潮に達します。また、劇は、暴力と正義、野心と責任、忠誠心と裏切りといった普遍的な倫理的問題を提起し、観客に自らの価値観を問い直させるような力強さを持っています。