## シェイクスピアのシンベリンの周辺
執筆年代と初演
「シンベリン」がいつ書かれたのか、正確な日付は分かっていません。しかし、一般的には1609年から1611年の間に執筆されたと考えられています。この推測は、劇中のいくつかの要素、例えば1610年に発行されたイギリスの年代記「Holinshed’s Chronicles」からの影響や、同時代の他の作品との様式的な類似点などから導き出されたものです。
記録に残る「シンベリン」の初演は、1611年にロンドンのグローブ座で行われたものです。この時の公演は、ジェームズ一世の宮廷の前で行われたと言われています。
出典と影響
「シンベリン」の筋書きは、シェイクスピアが様々な文献から着想を得て作り上げたものです。最も重要な出典の一つに、古代ローマの歴史家スエトニウスの「皇帝伝」が挙げられます。劇中のブリテン王シンベリンと、彼と対立するローマ皇帝との関係は、この作品から着想を得たものです。
また、劇中劇「イモージェン」は、イタリアの詩人ボッカッチョの物語集「デカメロン」の一編を基にしています。この物語は、夫の留守中に妻の貞節を試そうとする男と、それを乗り越える妻の姿を描いたものです。
ジャンルとテーマ
「シンベリン」は、その複雑な構成と、悲劇、喜劇、ロマンスの要素を併せ持つことから、一般的に「問題劇」または「ロマンス劇」に分類されます。劇中では、愛と嫉妬、信頼と裏切り、贖罪と赦しといった、普遍的なテーマが描かれています。
舞台設定と登場人物
「シンベリン」の舞台は、古代ブリテンとローマ帝国です。劇中には、ブリテン王シンベリンとその娘イモージェン、イモージェンの夫ポスタムス、悪党イアーチモなど、個性豊かな登場人物が登場します。
上演史と評価
「シンベリン」は、シェイクスピアの存命中は人気のある作品だったようですが、その後しばらくの間はあまり上演されませんでした。18世紀後半に復活上演されてからは、一定の人気を保っています。
批評家からの評価は時代によって変化してきましたが、近年では、その複雑な筋立て、登場人物の心理描写、詩的な表現などが高く評価されています。