シェイクスピアのコリオレイナスの周辺
ローマ史と史劇としての位置づけ
「コリオレイナス」は、ウィリアム・シェイクスピアによって1605年から1608年の間に書かれたと考えられている戯曲です。古代ローマの将軍、ガイウス・マルキウス・コリオレイナスの人生を描いた作品であり、史実と虚構を織り交ぜたシェイクスピアの史劇の一つに数えられます。
史料としてのプルタルコスの影響
シェイクスピアは、この劇の題材をプルタルコスの「対比列伝」から得ています。「対比列伝」は、古代ギリシャとローマの著名人たちの伝記を集めた書物であり、コリオレイナスの生涯もその中に含まれています。シェイクスピアは、プルタルコスの記述を忠実に劇に反映させており、登場人物の性格や物語の展開などにプルタルコスの影響を強く見ることができます。
政治劇としての側面
「コリオレイナス」は、政治的なテーマを色濃く反映した作品としても知られています。舞台となる古代ローマは、貴族階級であるパトリキと平民階級であるプレブスとの対立が激化する時代であり、コリオレイナスはその渦中に巻き込まれていくことになります。劇中では、民衆の怒り、政治的な陰謀、指導者の苦悩などが描かれ、権力と民衆、個人と社会の関係について深く考えさせられる作品となっています。
コリオレイナスの性格
主人公のコリオレイナスは、優れた軍人としてローマに勝利をもたらす英雄である一方、高慢で融通が利かず、民衆を軽蔑する人物として描かれています。彼は自分の信念と誇りを何よりも重んじ、それが故に民衆の支持を失い、悲劇的な運命をたどることになります。彼の複雑な性格描写は、シェイクスピアの作品の中でも特に傑出したものとして高く評価されています。