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シェイクスピアのコリオレイナスに描かれる個人の内面世界

シェイクスピアのコリオレイナスに描かれる個人の内面世界

コリオレイナスの内面的葛藤

シェイクスピアの「コリオレイナス」は、ローマの将軍コリオレイナス(本名はケイアス・マーシアス)の内面世界を深く掘り下げた作品です。彼の内面的葛藤の中心には、自身の誇りと名誉、そして母親ヴォルムニアからの期待と圧力があります。コリオレイナスは、戦場では冷酷で無慈悲な戦士として知られていますが、その内心には、他者からの評価や自身のアイデンティティに対する深い不安が潜んでいます。

彼の誇りは、彼を高潔な戦士として描く一方で、非常に脆弱なものでもあります。コリオレイナスの行動は、常に名誉を守るためのものであり、それが彼の一貫した動機となっています。しかし、その名誉が彼を孤立させ、最終的には悲劇的な結末へと導くのです。

母親ヴォルムニアとの関係

コリオレイナスの内面世界を理解する上で、母親ヴォルムニアとの関係は欠かせません。ヴォルムニアは息子に対して非常に強い期待を抱いており、その期待がコリオレイナスの行動を大きく左右します。彼は母親の期待に応えるために戦士としての名誉を追求し、その結果として多くの栄光を手にします。しかし、その期待に応え続けることが彼自身のアイデンティティを抑圧し、内面的な葛藤を引き起こします。

ヴォルムニアの影響は、コリオレイナスの決断や行動に直接的な影響を与え、彼の内面的な葛藤をさらに深めます。母親の期待と自身の信念との間で揺れ動くコリオレイナスの姿は、シェイクスピアの巧みな人物描写の一例と言えるでしょう。

政治と個人の対立

「コリオレイナス」では、個人の内面世界と政治の世界との対立も重要なテーマとして描かれています。コリオレイナスは、戦場では無敵の戦士である一方で、政治の世界では不器用であり、その結果として多くの敵を作ります。彼の誇り高き性格が、政治的な駆け引きや妥協を嫌うため、彼はしばしば孤立し、敵対者からの攻撃を受けることになります。

この政治と個人の対立は、コリオレイナスの内面的な葛藤をさらに際立たせます。彼は自らの信念を曲げずに名誉を守ろうとする一方で、政治の世界での生き残りを図る必要があります。この矛盾する要求が、彼の内面世界を一層複雑にし、最終的には悲劇的な結末へと導くのです。

結論

シェイクスピアの「コリオレイナス」は、個人の内面世界を深く掘り下げた作品であり、主人公の内面的葛藤、母親との関係、そして政治と個人の対立が巧みに描かれています。コリオレイナスの内面世界は、その誇り高き性格と外部からの圧力との間で揺れ動く姿を通じて、シェイクスピアの優れた人物描写の一例を示しています。

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