## シェイクスピアのアントニーとクレオパトラに関連する歴史上の事件
プトレマイオス朝エジプト
劇の舞台は紀元前1世紀、ローマ共和国が内戦と権力闘争に見舞われていた激動の時代です。この時代、エジプトはプトレマイオス朝として知られるギリシャ系の王朝によって統治されていました。プトレマイオス朝は、アレキサンダー大王の将軍であったプトレマイオス1世によって紀元前305年に建国されました。クレオパトラ7世は、この王朝の最後のファラオであり、古代エジプトを統治した最後のファラオの一人でした。
プトレマイオス朝は、その歴史の中で徐々に衰退し、ローマの影響を受けるようになりました。クレオパトラの治世までに、エジプトはローマの従属国となり、その運命はローマの政治的野心に大きく左右されるようになりました。
第1回三頭政治とアントニウスの東方への旅
マーカス・アントニウスは、ユリウス・カエサル暗殺後のローマ共和国において、最も強力な人物の一人でした。カエサルのもとで経験を積み、彼の腹心の一人として頭角を現しました。カエサルの死後、アントニウスはオクタヴィアヌス（後のアウグストゥス）、マルクス・アエミリウス・レピドゥスと第1回三頭政治を結成し、ローマを共同で統治しました。
三頭政治におけるアントニウスの役割は、ローマ共和国の東部を統治することであり、エジプトもその管轄下にありました。紀元前41年に、アントニウスはクレオパトラをタルソスに呼び出し、彼女の王国に対するローマへの忠誠心を問いただしました。伝えられるところによると、クレオパトラはアントニウスを魅了し、二人は恋人同士になり、その後10年間近く続いた政治的、恋愛関係が始まりました。
アントニウスとクレオパトラの同盟
アントニウスとクレオパトラの関係は、個人的な関係であると同時に、政治的な同盟でもありました。クレオパトラは、アントニウスの支援を得て、プトレマイオス朝の領土を回復し、かつての栄光を取り戻したいと考えていました。一方、アントニウスは、エジプトの富と資源を利用して、ローマ世界における自身の地位を強化しようと目論んでいました。
アントニウスとクレオパトラは、共に軍隊を率いて戦場に臨み、二人の関係はローマにおいて大きなスキャンダルとなりました。アントニウスは、ローマの妻であるオクタヴィアの妹と離婚し、クレオパトラとの間に3人の子供をもうけました。これらの行動は、ローマの伝統や道徳に反するものであり、多くのローマ人、特にアントニウスの政敵であるオクタヴィアヌスから非難されました。
アクティウムの海戦とその後
アントニウスとオクタヴィアヌスの対立は、避けられないところまで来ていました。紀元前31年、両者の艦隊は、ギリシャのアクティウム沖で激突しました。アクティウムの海戦は、ローマ共和国の歴史における決定的な戦いとなり、オクタヴィアヌスの勝利とアントニウスとクレオパトラの敗北に終わりました。
敗北後、アントニウスとクレオパトラはエジプトに逃げ込みましたが、オクタヴィアヌスの軍隊に追跡されました。絶望的な状況に追い込まれたアントニウスは自殺を選び、クレオパトラもまた、オクタヴィアヌスの捕虜となることを避けるため、毒蛇にかまれて自殺したとされています。クレオパトラの死をもって、プトレマイオス朝は終焉を迎え、エジプトはローマの属州となりました。
アントニウスとクレオパトラの物語は、何世紀にもわたって人々を魅了し続けてきた、権力、愛、裏切り、悲劇の物語です。シェイクスピアの戯曲は、これらの歴史的な出来事を題材に、人間の感情の複雑さを鮮やかに描き出しています。