## シェイクスピアのアントニーとクレオパトラと言語
登場人物の対比を描く言葉
シェイクスピアは言葉巧みに、ローマとエジプト、そしてアントニーとクレオパトラの対比を描き出しています。
ローマは規律、理性、実用性を重視する男性的な世界として描かれ、その言葉は簡潔で直接的です。一方、エジプトは官能性、感情、贅沢さを象徴する女性的な世界として描かれ、その言葉は比喩やイメージに富んでいます。
アントニーは、ローマの将軍として勇猛果敢さと雄弁さを持ちながらも、クレオパトラの魅力に翻弄されることで、その理性と義務との間で葛藤します。彼の言葉は、ローマ的な簡潔さとエジプト的な装飾性を併せ持ち、彼の内面における葛藤を反映しています。
クレオパトラは、その美貌と言葉の魔力でアントニーを虜にする、狡猾で情熱的な女王として描かれています。彼女の言葉は、機知に富み、挑発的で、しばしば演劇的な要素を帯びています。彼女は言葉によって自らの望むものを手に入れようとしますが、その一方で、アントニーへの深い愛情も表現しています。
比喩表現とイメージ
シェイクスピアは、「アントニーとクレオパトラ」の中で、比喩表現やイメージを駆使して、登場人物の心情や劇的な状況を描写しています。
例えば、クレオパトラはアントニーを「太陽」や「世界」と呼び、彼への情熱と依存を表現します。一方、アントニーはクレオパトラを「エジプトの毒蛇」と呼び、彼女の危険な魅力と自分への影響力を示唆します。
また、劇中には「海」「船」「航海」などのイメージが繰り返し登場し、運命の移り変わりや、登場人物たちの不安定な状況を象徴しています。
詩と散文
「アントニーとクレオパトラ」では、登場人物の身分や場面に応じて、詩と散文を使い分けています。
アントニーやクレオパトラなどの高貴な身分の登場人物は、主に韻文で話し、感情の高ぶりや重要な場面では、特に格調高い詩的な表現が用いられます。
一方、下級の兵士や庶民は、主に散文で話し、現実的で日常的な場面が描写されます。
このように、シェイクスピアは「アントニーとクレオパトラ」において、言葉の力によって、登場人物の複雑な心情、政治的な駆け引き、壮大な歴史絵巻を鮮やかに描き出しています。