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シェイクスピアの『リチャード三世』の思想的背景

## シェイクスピアの『リチャード三世』の思想的背景

中世末期からルネサンス期への移行

『リチャード三世』が書かれた16世紀末のイングランドは、中世の封建社会からルネサンス期への移行期にありました。 この時代は、社会構造、宗教、政治思想が大きく変化し、人々の価値観に大きな影響を与えました。 このような時代の変化は、『リチャード三世』の作品世界にも色濃く反映されています。

神の摂理と自由意志

中世ヨーロッパでは、人間の運命は神の摂理によって決められていると信じられていました。 しかし、ルネサンス期に入ると、人間は自らの意志によって運命を切り開くことができるとする、自由意志の概念が台頭してきました。 『リチャード三世』では、リチャードの悪行は神の罰によるものと解釈することもできますし、彼自身の邪悪な意志によるものと解釈することもできます。 このように、本作は神の摂理と自由意志という、当時の思想的対立を反映していると言えるでしょう。

マキャベリズムの影響

ニッコロ・マキャベリの『君主論』は、当時のヨーロッパ知識人に大きな影響を与えました。 『君主論』は、君主は権力維持のためには手段を選ばず、時には冷酷な決断も必要だと説いています。 リチャード三世の冷酷で狡猾な人物像は、マキャベリの思想の影響を強く受けていると解釈されています。 彼は目的達成のためには手段を選ばず、謀略や殺人を繰り返します。 彼の言動は、当時の観客にマキャベリの思想を想起させた可能性があります。

テューダー朝の政治宣伝

『リチャード三世』は、テューダー朝の祖先であるヘンリー七世を正当な王位継承者として描くことで、テューダー朝の支配を正当化する政治的な意図も込められていました。 リチャード三世を極悪非道の暴君として描写することで、彼を倒し王位についたヘンリー七世の行為は、暴君から国を救った英雄的な行為として賞賛されます。

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