## シェイクスピアの『リチャード三世』の対称性
登場人物の対称性
リチャード三世は、劇中で多くの登場人物と対峙し、その関係性には明らかな対称性が見て取れます。
* **リチャードとエドワード四世：** リチャードは、兄であるエドワード四世の王位を奪おうと画策します。この兄弟の関係は、後にリチャード自身が王位に就き、甥であるエドワード五世とヨーク公リチャードを殺害することで反転します。
* **リチャードとバッキンガム公：** リチャードは、バッキンガム公を巧みな話術で操り、自らの野望実現のために利用します。しかし、後にバッキンガム公はリチャードに反旗を翻し、その結果として処刑されます。
* **リチャードとアン夫人：** リチャードは、夫と父を殺害した張本人でありながら、アン夫人を言葉巧みに口説き落とし妻とします。しかし、アン夫人は後にリチャードに裏切られ、謎の死を遂げます。
構造上の対称性
『リチャード三世』は、その構造にも対称性が見られます。
* **上昇と下降：** 劇の前半は、リチャードが策略を巡らせ、王位へと上り詰めていく様子が描かれます。一方、後半は、リチャードの悪行が露見し、リッチモンド伯との最終決戦で敗北するまでが描かれます。
* **夢と現実：** 劇中では、リチャードや他の登場人物たちが重要な夢を見る場面が何度か登場します。これらの夢は、しばしば現実の出来事を暗示しており、劇に緊張感と対称性をもたらしています。
言語の対称性
シェイクスピアは、言葉巧みなリチャードの台詞の中に、対称性を持たせた表現を多く用いています。
* **皮肉と反語：** リチャードは、自身の邪悪な本性を隠すために、しばしば皮肉や反語を用います。
* **対句法：** リチャードの台詞には、対照的な言葉を並べることで、彼の内面の葛藤や劇的な状況を強調する対句法が多く見られます。
これらの対称性は、『リチャード三世』という作品に深みと複雑さを与え、観客に多様な解釈を促す要素となっています。