シェイクスピアの「マクベス」関連著作
ホリンシェッドの「年代記」
1587年に出版されたラファエル・ホリンシェッドの「年代記」(正式名称は”The Chronicles of England, Scotland and Ireland”)は、シェイクスピアが「マクベス」の題材としたスコットランド史を含む、ブリテンの歴史書です。シェイクスピアは「マクベス」の筋書きだけでなく、登場人物や出来事の多くを「年代記」から借用しています。例えば、マクベスがダンカン王を殺害する場面や、バンクォーの亡霊が現れる場面などは、「年代記」に記された出来事に基づいています。
ジェームズ一世の「悪魔学」
1597年に出版されたジェームズ6世(後のイングランド王ジェームズ1世)の「悪魔学」(”Daemonologie”)は、魔女や魔術に関する論文であり、当時のヨーロッパにおける魔術への関心の高まりを反映しています。シェイクスピアは「マクベス」の魔女たちの描写に、「悪魔学」で述べられている魔女像を参考にしています。具体的には、魔女が未来を予言したり、嵐を起こしたりする能力を持つとされたことや、王の暗殺を企てる存在として恐れられていたことが挙げられます。
「マクベスの悲劇」の quarto 版
「マクベス」は、1623年に出版された「ファースト・フォリオ」と呼ばれるシェイクスピア戯曲全集に収録されるよりも前に、1603年にquarto版として出版されました。quarto版は、ファースト・フォリオ版よりもテキストが短く、一部の場面が省略されていたり、台詞が異なっていたりすることが知られています。quarto版の存在は、「マクベス」の成立過程や当時の上演状況を考察する上で重要な資料となっています。