シェイエスの第三身分とは何かに影響を与えた本
影響を与えた書物：ジョン・ロック著「統治二論」
シェイエスの「第三身分とは何か」は、フランス革命期に発せられた政治パンフレットであり、当時のフランス社会に大きな衝撃を与えました。このパンフレットでシェイエスは、第三身分、すなわち聖職者と貴族を除く大多数の民衆こそが国家の基盤であると主張し、彼らの政治参加の拡大を求めました。シェイエスの思想に影響を与えた書物は数多くありますが、中でも特に重要なのが、イギリスの哲学者ジョン・ロックの「統治二論」です。
自然権と社会契約説
ロックは「統治二論」の中で、人間は生まれながらにして「自然権」を有していると説きました。自然権とは、生命、自由、財産に対する権利であり、いかなる権力によっても侵害されるべきではありません。しかし、自然状態では、個々人が自分の権利を主張し合い、紛争が生じる可能性があります。そこで人々は、互いの権利をより良く保護するために、社会契約によって政府を形成し、一部の権利を政府に委譲します。
人民主権と抵抗権
ロックの思想で重要なのは、政府の権力は人民から委託されたものであるという点です。政府は、人民の利益のために、人民の同意に基づいて統治しなければなりません。もしも政府が人民の権利を侵害するような暴政を敷くならば、人民は政府に抵抗し、新たな政府を樹立する権利を有します。これは、人民主権と抵抗権という概念であり、シェイエスの思想の根幹をなすものでした。
シェイエスの思想への影響
シェイエスは、ロックの思想をフランスの状況に適用し、第三身分こそが国家の真の主体であると主張しました。聖職者と貴族は、特権を持つだけであり、社会に貢献していないばかりか、むしろ社会の発展を阻害していると批判しました。そして、第三身分が政治に参加し、自分たちの代表者を通して国政を担うべきだと訴えたのです。
このように、「統治二論」は、シェイエスの思想形成に大きな影響を与え、フランス革命の思想的基盤を築く上で重要な役割を果たしました。ロックの自然権、社会契約、人民主権、抵抗権といった概念は、シェイエスの思想を通してフランス革命期の人々に広く受け入れられ、フランス革命の理念を形成する上で欠かせないものとなりました。