ザビエルの「聖フランシスコ・ザビエル書簡集」の思想的背景
ザビエルの思想形成に影響を与えたもの
ザビエルの書簡集を理解する上で、彼の思想背景を探ることは非常に重要です。どのような思想が、彼の行動原理となり、あの熱烈な布教活動や、故郷への詳細な報告、そして時に見せる苦悩や葛藤を生み出したのでしょうか。
1. イグナチオ・デ・ロヨラとイエズス会
ザビエルの思想は、イエズス会創設者イグナチオ・デ・ロヨラの思想と密接に関係しています。ロヨラは「霊操」の中で、神への絶対的服従と、神のより大いなる栄光のために働くことを説きました。この思想は、ザビエルの生き方、すなわち神の召命に従い、命をかけて異教の地へ赴き、人々をキリスト教へ導こうとした姿勢に色濃く反映されています。書簡集には、困難な状況下でも神の御心に従う決意を示す記述が数多く見られ、ロヨラの思想がザビエルの行動原理となっていたことを示唆しています。
2. 中世スコラ哲学
ザビエルはパリ大学で学び、当時の主流であったスコラ哲学の影響を受けています。スコラ哲学は、理性を通して神を理解しようとする学問体系であり、ザビエルは書簡の中で、キリスト教教義を論理的に説明しようと試みています。これは、彼が単に感情的にキリスト教を広めていたのではなく、理性に基づいた布教活動を行おうとしていたことを示唆しています。
3. 当時のヨーロッパ社会
ザビエルが活躍した16世紀は、大航海時代が始まり、ヨーロッパ社会が大きく変化した時代でした。未知の世界との出会いは、キリスト教世界を広げるという新たな使命感をもたらしました。ザビエルの書簡からは、当時のヨーロッパ社会に満ちていた、キリスト教による世界布教への熱気が伝わってきます。