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サロメ:ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)の人物像

サロメ:ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)の人物像

オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』に登場するヨカナーン(洗礼者ヨハネ)は、独特の人物像を持つキャラクターです。この作品は、新約聖書のエピソードを基にしていますが、ワイルド独自の解釈が加えられています。ヨカナーンは、道徳的な厳格さと、神への絶対的な信仰を象徴する人物として描かれています。

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ヨカナーンの道徳的厳格さ

ヨカナーンは、ヘロデ王の宮殿から牢獄に投じられた予言者です。彼の道徳的厳格さは、ヘロディアス(ヘロデ王の妻)とその娘サロメに対する彼の態度から明らかになります。ヨカナーンは、ヘロディアスのヘロデとの結婚を不道徳と断じ、彼女を公然と非難します。さらに、サロメの情熱的な愛の告白に対しても、彼は自身の純潔と信仰を守るために、彼女を拒絶します。このように、ヨカナーンの行動は、彼の道徳的な信念に基づいており、その厳格さが際立っています。

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神への絶対的信仰

ヨカナーンの人物像のもう一つの重要な側面は、神への絶対的な信仰です。彼は、神の言葉を伝える予言者としての役割に深くコミットしています。牢獄で過ごす間も、彼の言葉は常に神の意志を反映しており、神への忠実さを決して曲げません。ヨカナーンは、自分の運命が神によって定められていると信じており、その信仰は彼の言動に強く影響を与えています。この絶対的な信仰は、サロメへの拒絶だけでなく、ヘロデ王に対する不屈の態度にも表れています。

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サロメにおけるヨカナーンの役割

ワイルドの『サロメ』におけるヨカナーンの役割は、道徳的な厳格さと神への絶対的信仰を通じて、他の登場人物とは一線を画す、精神性が高いキャラクターとしての位置付けです。彼は、物語の中で唯一、世俗的な欲望や政治的な権力に惑わされず、自己の信念と神の意志に忠実な存在として描かれています。ヨカナーンのこの堅固な姿勢は、サロメの強烈な欲望と対比され、作品全体のテーマとも密接に関連しています。

ヨカナーンの人物像は、ワイルドが『サロメ』において描き出す複雑な人間性と道徳的問題に対する探究心の表れでもあります。神への絶対的信仰と道徳的厳格さを持ちながらも、彼の運命は悲劇的なものとなり、この矛盾は『サロメ』の核心的なテーマの一つとなっています。

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