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サルトルの弁証法的理性批判の案内

## サルトルの弁証法的理性批判の案内

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作品の概要

「弁証法的理性批判」は、ジャン=ポール・サルトルによって著された、20世紀を代表する哲学書の一つです。1960年に第1巻「実存的経験から出発する試み:実践的アンサンブルの理論」が、1985年に第2巻「知性の冒険」が刊行されました(サルトル自身は生前に第2巻を完成させることはできませんでした)。当初サルトルは全4巻の構想を立てていましたが、未完に終わっています。

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執筆の背景と目的

サルトルは、初期の代表作「存在と無」において、人間の根本的な自由を論じました。しかし、当時のマルクス主義者たちから、「存在と無」における自由論は、歴史的・社会的制約を軽視した抽象的な個人主義であるという批判を受けます。

こうした批判に応答すべく、サルトルは「弁証法的理性批判」において、人間の自由と歴史の必然性を弁証法的に統合しようと試みました。彼自身の言葉を借りれば、「自由を基礎づけるマルクス主義」、あるいは「マルクス主義を実存主義的に読み解く試み」を目指したと言えるでしょう。

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主要な概念

サルトルは、「弁証法的理性批判」において、既存のマルクス主義には見られなかった独自の概念を多数提示しています。その中でも特に重要なものをいくつか紹介します。

* **実践的アンサンブル**: 個人の実践と、他者の実践が織りなす、相互作用的な関係性の網目。社会や歴史は、この実践的アンサンブルを通して成立するとされます。

* **疎外**: 人間が、自らの実践の産物であるにもかかわらず、それを支配し得ない状態。資本主義社会においては、労働者が自らの労働の産物を支配できず、疎外されているとされます。

* **実践的惰性**: 過去の状況や制度が、現在の状況を規定し、人間の自由な実践を阻害する力。サルトルは、マルクス主義における唯物論が、この実践的惰性を過度に強調していると批判しました。

* **全体化**: 分断された個々の実践が、共通の目的のために統合される運動。サルトルは、階級闘争を通してプロレタリアートが革命を達成することが、全体化の一つの形態であると考えました。

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影響と評価

「弁証法的理性批判」は、20世紀後半のフランス思想界に大きな影響を与えました。特に、1968年の「五月革命」においては、学生や労働者たちの間で盛んに読まれ、その後の社会運動にも大きな影響を与えたと言われています。

一方で、難解な文章で知られており、その解釈には現在に至るまで議論が絶えません。

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