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サルトルの弁証法的理性批判の原点

## サルトルの弁証法的理性批判の原点

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マルクスの影響

サルトルの弁証法的理性批判は、カール・マルクスの思想に深く根ざしています。特に、マルクスの歴史唯物論と疎外論は、サルトルの思想形成に決定的な影響を与えました。

マルクスの歴史唯物論は、人間社会の歴史を、物質的な生産様式の発展によって規定されるものとして捉えます。サルトルは、この唯物論的な歴史観を継承し、人間の意識や存在もまた、物質的な条件によって規定されると考えました。

また、マルクスの疎外論は、資本主義社会においては、労働者が自らの労働の成果から疎外され、人間性を喪失していくことを指摘しました。サルトルは、この疎外論をさらに発展させ、人間存在の根源的な疎外をテーマと据えました。

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現象学の影響

サルトルの思想のもう一つの重要な源泉は、エドムント・フッサールの現象学です。現象学は、意識の構造とその対象との関係を、先入観なしに記述することを目指す哲学です。

サルトルは、フッサールの現象学の方法を用いて、人間の意識の構造を分析しました。特に、サルトルは、人間の意識は常に「何かに向かっている」という「志向性」を持つことを強調しました。

また、サルトルは、フッサールの「超越論的還元」という方法を批判的に継承しました。超越論的還元とは、意識の背後に存在すると想定される客観的な世界を括弧に入れ、意識の現象そのものを分析する方法です。サルトルは、フッサールとは異なり、超越論的還元によって客観的な世界を完全に排除することはできないと考えました。

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キルケゴール、ハイデガーの存在論

サルトルの思想には、セーレン・キルケゴールやマルティン・ハイデガーといった実存主義哲学の影響も色濃く見られます。キルケゴールは、人間の不安や孤独といった実存的な問題をテーマとし、既存の社会や道徳の枠組みを超えた、個人の主体的な決断の重要性を説きました。ハイデガーもまた、人間存在の有限性や不安といった問題に焦点を当て、「死」への意識が人間存在を規定するものであると主張しました。

サルトルは、キルケゴールやハイデガーの思想から、「実存は本質に先立つ」というテーゼを引き継ぎました。これは、人間には、あらかじめ決められた本質や目的は存在せず、自らの存在を自由に選択し、創造していく存在であることを意味します。サルトルは、この自由と責任を伴う人間存在のあり方を「実存」と呼び、その特徴を明らかにすることを試みました。

これらの思想的背景を踏まえ、サルトルは独自の弁証法的理性批判を展開していきます。それは、マルクスの唯物史観とフッサールの現象学的方法を融合させつつ、キルケゴールやハイデガーの実存主義哲学を取り込みながら、人間の自由と責任、そして歴史における実践の重要性を強調するものでした。

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