## サルトルの存在と無の価値
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サルトルの主著における位置づけ
「存在と無」は、1943年に発表されたサルトルの主著とされ、実存主義の代表的な書物として知られています。この著作でサルトルは、現象学的方法を用いながら、伝統的な形而上学を批判し、人間の存在の本質について深く考察しました。
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「存在と無」における主要な概念
「存在と無」においてサルトルが展開した主要な概念には、以下のようなものがあります。
* **意識の先行性:** サルトルは、「意識は常に何かの意識である」というフッサールの現象学を出発点に、意識には対象が先立って存在するということを主張しました。つまり、意識そのものは純粋な無であり、対象を意識することによって初めて、意識は存在を現すという考え方です。
* **人間存在の「無」としての側面:** サルトルは、人間存在を「存在論的な意味での無」と捉えました。人間は、石や木のような確定した本質を持つ存在ではなく、常に自由な選択を通じて、自らを創造していく存在であるとしました。この自己創造の過程において、人間は「無」から出発し、「無」に向かっていく存在であるとされます。
* **自由と責任:** サルトルによれば、人間は常に自由であり、その自由は「放棄することのできない重荷」として存在します。そして、人間はその自由な選択によって、自己だけでなく、他者や世界をも創造していく責任を負うことになります。
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「存在と無」が後世に与えた影響
「存在と無」は、20世紀後半の思想界に大きな影響を与え、実存主義のみならず、哲学、文学、演劇、政治思想など、様々な分野に影響を与えました。特に、第二次世界大戦後の不条理な時代背景の中で、人間の自由と責任を強調したサルトルの思想は、多くの人々の共感を呼びました。
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「存在と無」に対する評価
「存在と無」は、発表当初から様々な評価を受けてきました。その難解な文章や、時に極端な主張は、批判の対象となることも少なくありませんでした。しかし、人間の存在の本質に迫る哲学的深度、そして自由と責任という普遍的なテーマを扱っていることから、今日においてもなお、多くの読者を惹きつけてやまない作品です。