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サルトルの存在と無に影響を与えた本

サルトルの存在と無に影響を与えた本

現象学的心理学についての講義 / フランツ・ブレンターノ

ジャン=ポール・サルトルの代表作『存在と無』は、20世紀の哲学に多大な影響を与えた実存主義の金字塔とされています。 この複雑で難解な書は、人間の自由、責任、存在の意味といった深淵なテーマを探求しており、その思想の根底には、様々な思想家や哲学体系の影響を見て取ることができます。 中でも、フランツ・ブレンターノの『現象学的心理学についての講義』は、サルトルの哲学的発展に重要な影響を与えた一冊として挙げられます。

ブレンターノは、19世紀後半に活躍したオーストリアの哲学者・心理学者で、意識の分析を重視する「記述心理学」の創始者として知られています。 彼は、意識は常に「何ものか」に向かっているという「志向性」という概念を提唱しました。 つまり、意識は、知覚、判断、感情、意志といった様々な仕方で、対象と結びついているのであり、対象のない意識はあり得ないと主張したのです。

ブレンターノのこの思想は、サルトルの哲学の根幹を成す「意識の虚無性」という概念に大きな影響を与えました。 サルトルは、ブレンターノの志向性の概念を発展させ、意識はそれ自体としては何の内容も持たず、常に外界の対象に向かうことによってのみ存在しうると考えました。 サルトルは、意識を「無」と呼び、それはそれ自体としては何も規定されておらず、自由であることを意味しました。

『現象学的心理学についての講義』の影響は、サルトルの意識論にとどまりません。 ブレンターノは、意識の志向性を分析する際に、「内観」と呼ばれる方法を重視しました。 内観とは、自分の意識を客観的に観察し、その内容を記述する方法です。 サルトルは、この内観の方法を自身の哲学に取り込み、人間の意識や存在を探求する主要な方法としました。

ブレンターノの思想は、サルトルの哲学に決定的な影響を与え、実存主義の形成に大きく貢献しました。 『存在と無』における意識の虚無性、自由、責任といった概念は、ブレンターノの志向性、内観といった概念から発展したものであり、サルトルは独自の思想を展開する上で、ブレンターノの哲学を重要な土台として利用したと言えるでしょう。

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