サリンジャーのライ麦畑でつかまえての対極
社会への順応と調和:トルストイの「戦争と平和」
「ライ麦畑でつかまえて」がホールデン・コールフィールドの孤独と疎外感を鮮やかに描き出すのに対し、「戦争と平和」は広大な歴史のうねりの中で、登場人物たちが社会との複雑な関係性を築き上げていく様を壮大なスケールで描いています。
「戦争と平和」は、19世紀初頭のロシアを舞台に、ナポレオン戦争の時代を生きた貴族たちの愛憎劇や人生の変遷を、綿密に織り込まれたプロットと、登場人物たちの心理描写によって描き出しています。登場人物たちは、戦争や恋愛、結婚、家族といった人生の様々な局面を通して成長し、社会との繋がりや自身の役割を見出していく様子が描かれています。
特に、ピエール・ベズーホフやアンドレイ・ボルコンスキーといった主要人物は、理想と現実の狭間で葛藤しながらも、社会との関わりの中で自身のアイデンティティを確立していきます。彼らの経験は、個人が社会の一員としてどのように生きていくべきか、という普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
「ライ麦畑でつかまえて」のホールデンが大人社会への幻滅から孤立を選ぶのに対し、「戦争と平和」の登場人物たちは、社会との関わりを通して成長し、自身の居場所を見つけていくという対照的な姿が描かれている点が特徴的です。