サリンジャーのライ麦畑でつかまえての世界
登場人物
* **ホールデン・コールフィールド:** 物語の語り手で、16歳の少年。ペンシー高校を退学になり、ニューヨークを彷徨う。周囲の大人や社会全体に幻滅し、“偽善者”と呼んで嫌悪している。
* **D.B.コールフィールド:** ホールデンの兄。作家だが、現在はハリウッドで脚本を書いており、ホールデンからは「売れっ子」とみなされ軽蔑されている。
* **フィービー・コールフィールド:** ホールデンの妹。10歳だが、頭がよく、ホールデンは彼女を深く愛している。
* **ワード・ストラドレーター:** ホールデンのルームメイト。ハンサムでスポーツ万能だが、ホールデンからは「偽善者」と見なされている。
* **ロバート・アックリー:** ホールデンの寮の隣の部屋に住む、ニキビ顔の学生。不潔で社交性に欠けるため、ホールデンから嫌われている。
* **ジェーン・ギャラガー:** ホールデンがかつて特別な感情を抱いていた少女。チェッカーの駒を動かす独特な癖があるなど、ホールデンにとって純粋さの象徴。
* **サリー・ヘイズ:** ホールデンがデートする、容姿端麗な少女。しかし、表面的な会話や行動が目立ち、ホールデンから「偽善者」とみなされている。
* **カール・ルース:** ホールデンが大学時代にルームメイトだった青年。ホールデンは彼にセックスの経験について相談する。
* **アントolini先生:** ホールデンがペンシー高校時代に国語を教えていた教師。ホールデンは彼に助言を求める。
舞台
物語は1950年代初頭のアメリカが舞台です。主に、ホールデンが通っていたペンシー高校やニューヨークが中心となっています。
* **ペンシー高校:** ホールデンが通っていた名門私立高校。ホールデンはこの学校を「偽善者」ばかりだと嫌悪している。
* **ニューヨーク:** ホールデンがペンシー高校を去った後、彷徨う大都市。セントラルパーク、美術館、バー、ホテルなど、様々な場所が登場する。
テーマ
* **大人社会への幻滅と反抗:** ホールデンは周囲の大人たちを「偽善者」とみなし、彼らの価値観や行動を激しく拒絶する。
* **純粋さへの憧憬と喪失感:** ホールデンは子供たちの無邪気さや純粋さに強く惹かれ、それを守りたいと願う一方で、自らが純粋さを失いつつあることに不安と焦燥感を抱いている。
* **孤独と alienation (疎外感):** 周囲の人々と理解し合えず、孤独感を深めていくホールデンの姿は、現代社会における若者の alienation を象徴しているともいえる。
* **アイデンティティの模索:** 思春期特有の不安定な精神状態の中、ホールデンは自分の居場所や将来について深く悩み、本当の自分を模索している。
象徴
* **ライ麦畑:** ホールデンが子供たちを「偽善」に満ちた大人社会から守る「catcher in the rye」になりたいと願う場面に登場する。子供たちの無邪気さ、純粋さを象徴する。
* **赤い狩猟帽:** ホールデンがしばしば被る、個性的な帽子。彼の反逆心や孤独感を象徴すると解釈される。
* **セントラルパークの鴨:** 冬になると姿を消してしまう鴨たち。ホールデンの不安定な精神状態や、変化を恐れる心を象徴する。
* **美術館:** 展示物はいつまでも変わらないため、ホールデンにとって安らぎの場所となる。変化を拒み、純粋なものを守りたいという彼の願望を象徴する。
文体
* **一人称視点:** ホールデン自身の目線で語られるため、彼の心情や考えが直接的に伝わってくる。
* **口語調の表現:** 若者特有のスラングや皮肉を交えた話し言葉で書かれており、リアルで親近感が持てる。
* **反復:** 「phony」や「it killed me」など、特定の単語やフレーズが繰り返し登場する。
* **唐突な場面転換:** ホールデンの意識の流れに沿って物語が展開するため、場面転換が唐突で、読者は彼の不安定な精神状態を追うことになる。
これらの要素が組み合わさり、『ライ麦畑でつかまえて』は思春期の少年の不安や葛藤をリアルに描き出し、多くの読者に共感を呼び起こしてきました。