サリンジャーのライ麦畑でつかまえてが扱う社会問題
偽善と表層性
ホールデン・コールフィールドは周囲の大人たちの行動や言動に偽善や表層性を見出し、嫌悪感を抱いています。彼は、大人たちが体裁や世間体を気にして本音を隠したり、うわべだけの付き合いをしたりすることに強い反発を感じています。
例えば、ホールデンは、 Pencey 校の校長が裕福な生徒の親だけに愛想良く接しているのを見て嫌悪感を抱きます。また、彼は、旧友の母親が息子のことを実際よりも良く見せようとしていることを見抜き、うんざりします。
ホールデンにとって、こうした大人たちの態度はすべて「インチキ」であり、彼はそこから逃れたいと願っています。
疎外と孤独
ホールデンは周囲の人々と打ち解けることができず、深い孤独を抱えています。彼は、本音を隠して生きる大人たちに対しては怒りや軽蔑を感じ、同世代の若者たちに対しても、彼らの無邪気さや未熟さに失望することが多く、なかなか心を開けません。
ホールデンは、妹のフィービーのように純粋で無垢な存在を求めていますが、現実の世界ではなかなかそのような存在を見つけることができません。彼は、自分が大人社会に馴染めないことに対する不安や焦燥感、孤独感を抱えながら、彷徨い続けます。
アイデンティティの喪失
思春期にあるホールデンは、自分が何者であり、将来どう生きていけばいいのか、その答えを見つけることができずに苦悩しています。彼は、大人になることへの不安、将来に対する希望を見いだせないことへの絶望、自分自身のアイデンティティを確立できないことへの焦燥感など、様々な感情に揺れ動いています。
ホールデンは、周囲の大人たちの生き方を「インチキ」だと決めつける一方で、彼らのように生きる以外の道を見つけることもできず、苦悩しています。彼は、自分自身の居場所を見つけ、自分らしく生きていくための答えを必死に探しているのです。