サリンジャーのフラニーとズーイと作者
フラニーとズーイにおける家族と信仰
「フラニーとズーイ」は、サリンジャーが深く傾倒していたテーマである家族と信仰を探求する作品です。 グラス家の7人兄弟の末っ子であるフラニーとズーイは、幼少期にラジオ番組「賢い子供たち」に出演していた経験から、精神的な探求と世俗的な生活の矛盾に苦悩しています。 特にフラニーは、周囲の人々の偽善性や自己中心性に幻滅し、信仰に救いを求めようとします。
作者自身の経験との関連
サリンジャー自身も、第二次世界大戦に従軍した経験から精神的に不安定な時期を過ごしており、東洋思想や神秘主義に傾倒していました。 また、彼は家族との関係に悩みを抱えていたことも知られています。 サリンジャーは、自身の経験や思想を作品に投影することで、人間存在の本質や救済の可能性を追求しようと試みていたと考えられます。
作品に反映された作者の姿勢
「フラニーとズーイ」では、サリンジャー自身の分身ともいえる兄のバディが登場します。 バディは、フラニーとズーイの苦悩を理解し、彼らを導こうとする存在として描かれています。 しかし、サリンジャーは明確な答えを提示するのではなく、読者自身の解釈に委ねるような結末を選択しています。