サリンジャーのナイン・ストーリーズと作者
サリンジャーの生い立ちと経歴
ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーは1919年1月1日、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に生まれました。裕福なチーズ商人の息子として育ち、マンハッタン区とブロンクス区の私立学校に通いました。その後、ペンシルベニア州のヴァリーフォージ陸軍士官学校やニューヨーク大学、コロンビア大学など、いくつかの大学で学びましたが、いずれも卒業には至りませんでした。
ナイン・ストーリーズの出版
サリンジャーは1940年代から文芸誌に短編小説を発表し始め、1951年に長編小説『ライ麦畑でつかまえて』で一躍有名になりました。『ナイン・ストーリーズ』は1953年に出版された短編集で、「バナナフィッシュにうってつけの日」や「笑い男」など、サリンジャーの代表作とされる9つの短編が収録されています。
ナイン・ストーリーズの内容とテーマ
『ナイン・ストーリーズ』に収録されている作品は、いずれも子供や青年の視点から描かれており、無垢な魂が大人の世界に触れることで生じる痛みや喪失、疎外感などが共通のテーマとなっています。また、多くの人物が裕福な家庭に育ちながらも、物質的な豊かさと精神的な空虚さの狭間で葛藤する姿が描かれています。
ナイン・ストーリーズと作者の関係
サリンジャー自身も裕福な家庭で育ち、幼少期から精神的な不安定を抱えていたと言われています。『ナイン・ストーリーズ』の登場人物たちの多くは、作者自身の分身ともいえる存在であり、作品を通してサリンジャーは自身の内面世界を投影していたと考えられます。
サリンジャーのその後
サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』の成功後、マスコミからの注目を避けるようになり、1965年以降は作品を発表しなくなりました。その後はニューハンプシャー州の田舎町で隠遁生活を送り、2010年1月27日に91歳で亡くなりました。