サドのジュスティーヌの思索
ジュスティーヌの苦悩と道徳の逆説
サドの小説「ジュスティーヌ」は、主人公ジュスティーヌが経験する数々の苦難を通して、当時の社会における道徳と悪徳、快楽と苦痛の関係を逆説的に描き出しています。ジュスティーヌは、生まれながらの美しい心と高潔な道徳観を持ちながらも、運命のいたずらによって悪徳がはびこる世界に巻き込まれていきます。
社会悪と無垢の対比
ジュスティーヌは、修道院で慈善に生きてきたにもかかわらず、世俗に出てからは、強盗、殺人、レイプなど、あらゆる悪徳に手を染めた人々から搾取され、虐待を受けます。彼女は自分の美徳を貫こうとするほど、より深い苦しみに突き落とされるという皮肉な状況に置かれます。一方、彼女の妹ジュリエットは、享楽主義的な生き方を選び、悪徳に身を投じることで富と社会的地位を得ていきます。
サドの思想と作品の解釈
サドの思想は、しばしば誤解され、センセーショナルに扱われることがあります。彼の作品は、暴力や性描写が過激であることから、ポルノグラフィーとみなされることもありますが、その根底には、人間の本性、社会の矛盾、道徳の相対性といった深淵なテーマが潜んでいます。「ジュスティーヌ」は、単純な勧善懲悪の物語ではなく、当時の社会における道徳観を揺さぶり、読者に倫理的な問いを投げかける作品と言えるでしょう。