サッカレーのバリーリンドンの批評
映画のスタイルと美的感覚
スタンリー・キューブリック監督の「バリー・リンドン」は、18世紀のヨーロッパを舞台にした時代劇で、その印象的なビジュアルと独特の美的感覚で広く称賛されています。映画は、ウィリアム・ホガースやトーマス・ゲインズバラなどの時代物の画家の作品を彷彿とさせる、自然光とキャンドルライトの使用で注目されています。キューブリックは、当時の絵画に特有の柔らかく自然主義的な照明を再現するために、特別に設計されたレンズ（NASAが開発したf/0.7の絞りを備えたカール・ツァイス製50mmレンズを含む）を使用しました。これにより、映画に独特の視覚スタイルがもたらされ、絵画的で夢のような雰囲気を醸し出しています。
物語とキャラクター
ウィリアム・メイクピース・サッカレーの小説「バリー・リンドンの幸運と不幸」を原作とするこの映画は、野心的なアイルランドのいなか者、レドモンド・バリーの物語です。レドモンド・バリーは、社会のはしごを上ろうと、名前をバリー・リンドンに変え、富と貴族の地位を求めて、イギリス社会と七年戦争の戦場を駆け巡ります。映画の物語はエピソード的に展開され、バリーの人生の浮き沈みを、彼の栄光への上昇から最終的な転落までたどります。一部の批評家は、物語のペースが遅く、感情的に距離を置いていると指摘していますが、他の批評家は、バリーの野心、虚栄、そして究極的には破滅のテーマを探求する、映画の複雑で微妙な性格描写を高く評価しています。
音楽と歴史的正確性
「バリー・リンドン」のもう1つの注目すべき側面は、映画の時代と完全に一致する、精巧で時代考証されたプロダクションデザイン、衣装、ヘアスタイル、メイクアップの使用です。キューブリックは、18世紀のヨーロッパの雰囲気と美学を再現するために細心の注意を払い、映画にリアリズムと信憑性の感覚を与えました。この映画では、フランツ・シューベルトのピアノ三重奏曲第2番変ホ長調やヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガーの「おもちゃの交響曲」など、その時代のクラシック音楽が効果的に使用されており、物語の雰囲気を高めています。