## サッカレーの「バリーリンドン」とアートとの関係
###
絵画的描写と視覚効果
サッカレーは「バリーリンドン」の中で、文章によって絵画的な描写を巧みに用いています。登場人物の容姿、服装、風景、室内装飾などを事細かに描写することで、読者の脳内に鮮明なイメージを喚起し、まるで絵画を鑑賞しているかのような感覚を抱かせます。
例えば、主人公バリー・リンドンの肖像は、18世紀の肖像画の様式を模倣して詳細に描写されています。彼の服装、姿勢、表情、そして背景の風景までもが、当時の絵画に見られる特徴を備えています。
さらにサッカレーは、光と影の表現にも長けており、明暗のコントラストを効果的に利用することで、場面に奥行きと立体感を与えています。
###
18世紀の美術への言及
小説内には、当時の有名な画家や絵画作品への言及が頻繁に登場します。例えば、ウィリアム・ホガース、ジョシュア・レノルズ、トーマス・ゲインズバラといった18世紀イギリスを代表する画家たちの名前が挙げられ、彼らの作品の特徴や画風がバリー・リンドンの物語と対比される形で描写されています。
また、特定の絵画作品が具体的な名称を挙げて描写されることもあります。例えば、バリーが初めてレディ・リンドンと出会う場面は、イギリスの風景画家ゲインズバラの作品を彷彿とさせる描写がなされています。
これらの言及は、単なる装飾的な要素ではなく、作品全体の雰囲気を構築し、登場人物の性格や社会的な立場を暗示する役割も担っています。