サガンの別れの朝の批評
あらすじ
サガンが18歳の時に発表した処女小説「悲しみよこんにちは」の続編にあたる作品。前作から8年後、28歳になったセシルは、夏の終わりに南仏プロヴァンスの別荘で、父レモンと彼の愛人エルザと共に日々を過ごしていた。しかし、エルザの旧友で既婚者のフィリップが現れたことで、セシルたちの関係は少しずつ崩れ始める。セシルは退屈しのぎにフィリップに近づき、エルザは嫉妬からレモンに結婚を迫る。しかし、エルザはフィリップを追ってパリへ戻り、その後事故死してしまう。エルザの死後、セシルと父は再び二人きりになり、夏の終わりのように、どこかもの悲しい空気が漂う。
登場人物
セシル
前作から8年経ち、28歳になったセシル。奔放で享楽的な生活を送っている。退屈を嫌い、刺激を求める一方で、どこか冷めた部分も持ち合わせている。
レモン
セシルの父。娘のセシルを溺愛している。エルザのことは真剣に愛しているものの、結婚には踏み切れないでいる。
エルザ
レモンの愛人。美しく知的な女性。レモンとの結婚を望んでいるが、彼の煮え切らない態度に不安を感じている。
フィリップ
エルザの旧友。既婚者でありながら、エルザに言い寄る。
テーマ
愛の不確かさ
エルザはレモンの愛を信じられず、セシルはフィリップとの関係に本気になれない。登場人物たちは皆、愛を求めながらも、真の愛を見つけられずにいる。
喪失と再生
エルザの死という悲劇を通して、セシルとレモンは喪失の悲しみを経験する。しかし、同時に新たな人生を歩み始めることを予感させる。
時間と変化
前作から8年という時間の流れが、登場人物たちの成長と変化を浮き彫りにしている。夏の終わりと重ね合わせ、時間の経過と変化の必然性を表現している。
文体
簡潔で洗練された文体で、登場人物たちの心理描写が巧みである。サガン特有の乾いたユーモアも健在。
評価
前作「悲しみよこんにちは」ほどの衝撃はないものの、サガンらしい繊細な心理描写と美しい文章で、大人の恋愛模様を描いている。時間と変化、愛と喪失といった普遍的なテーマを扱い、読者に深い余韻を残す作品として評価されている。